【5年 物の溶け方】
ポイント
「溶けるってどういうこと?」、普段何気なく使っているこの言葉の今は中々深いものです。生活経験を出し合うことから始め、楽しい実験が盛りだくさんの学習です。最後に大きな塩の結晶をつくりました。1年たつと直径1センチ以上の立方体に成長します。
1 ねらい
ものの溶け方について興味・関心をもって実験や観察を行い、ものが水に溶ける時には次の様な規則性があることを理解させ、物の溶け方の規則性についての考え方をもつことが出来るようにする。●ものが水に溶けると粒が見えなくなり、水溶液は透明になることが分かる。(溶解という現象)
●ものが水に溶けても、水とものを合わせた重さは変わらないことが分かる。(質量保存の法則)
●ものが水に溶ける量には限度があり、溶けるものや温度によって違う。この性質を利用して溶けているものを取り出すことができることが分かる。(蒸発・乾固)
2 学習指導計画
(1)教科書を見ると
1次 水よう液の重さ 4時間①物が水に溶けることについて話し合い,水溶液について知る。
②電子てんびんや上皿てんびんの使い方を知りる。
③溶かす前と溶かした後の全体の重さを比べる。
④水に溶けた時の様子を話し合う。
2次 水にとけるものの量 5時間
⑤メスシリンダーの使い方を知る。
⑥水に食塩を加えていき、どれぐらい溶けるか調べる。
⑦水にホウ酸を加えていき、どれぐらい溶けるか調べる。
⑧水溶液の水の量を増やしたり,水溶液の温度を上げたりして,溶け残りが溶けるか調べる
⑨ものが水に溶ける量についてまとめる
3次 とかしたもののとり出し方 3時間
⑩ろ過の仕方を知る。
⑪ろ液にホウ酸が溶けていることを知る。
⑫「確かめよう」「学んだことを生かそう」
物が溶ける(溶解)とはどういうことかを理解させることが学習の中心である。
(2)学習指導計画(13時間)(市教研で行った研究授業をもとに)
主な評価規準:【関】・【思・表】・【技】・【知】Ⅰ次(5時間)
①.ものが溶けるとは?
・アンケートをもとに話し合い学習のめあてをつかむ。
②③.ものが溶ける様子
・課題①塩・ザラメ糖・小麦粉は水に溶けるか観察しよう。
・課題②塩の結晶の溶ける様子を顕微鏡で観察しよう。
⇒溶けるとは①粒が見えなくなる②透明(無色・有色)
④.てんびんとメスシリンダーの使い方
・電子てんびんや上皿てんびんの使い方を知る
メスシリンダーのはかり方(水の体積)を知る。
⑤.水よう液の重さ
塩を水に溶かすと、重さはどうなるか。
課題③水の重さは300グラムです。食塩20グラムを入れたら全部溶けました。水溶液の重さはどうなるでしょうか。
⇒食塩水(塩の水溶液)は塩と水の合計の重さになる(質量保存の法則)
粒子概念の導入(イメージ)で理解を深める(イメージ図)
Ⅱ次(4時間)
⑥・⑦.水にとけるものの量 食塩とホウ酸が水に溶ける量(飽和溶液)
課題④食塩とホウ酸は、水に溶ける量にかぎりはあるのだろうか。
⇒ 物によって溶ける限度が違うことが分かる。
⑧・⑨.課題⑤溶け残った食塩やホウ酸を溶かす方法について話し合い、調べよう。
⇒ 温度が変われば溶ける限度が変わることが分かる。
Ⅲ次(4時間)溶かした物のとり出し方
⑩・⑪.ホウ酸の取り出し方(課題③の結果を想起して⑥に入る
課題⑥水に溶けたホウ酸を取り出してみよう(方法を考えて実験する)
⇒ 物が水に溶ける量には限度があり、この性質を利用して溶けている物を取り出すことができることが分かる
⑫・⑬.「ふりかえろう」
・塩の大きな結晶作り
・「ふりかえろう」「学んだことを生かそう」
◎学んだことを生かして大きな塩の結晶をつくる。
ブックトークを行い、興味・関心を高める。
3.授業の流れ
(1)ものが溶けるとは?
・アンケートをもとに話し合い、学習のめあてをつかむ。問:ものを溶かしたり、ものが溶ける様子を見た経験を書きましょう。
A:○○の時に、●●が溶けた
B:○○の時に、●●が▲▲に溶けた
Cその他(問題が解けた)
まとめ そのものが溶ける・ものを液体に入れて溶かす(この単元)
もの+液体=(溶けて)→ 溶液 もの+水=(溶けて)→水溶液
(2)(3)物が溶ける様子
・ものが溶けるとは?課題①塩・ザラメ糖・小麦粉は水に溶けるか観察しよう。
・ものが溶けるとは、①(無色・有色)透明になる、②粒が見えなくなる
(4)溶け方の観察(溶けるとは何か)
課題②塩の結晶の溶ける様子を顕微鏡で観察しよう。⇒溶けるとは①粒が見えなくなる②透明(無色・有色)
(5)てんびんとメスシリンダーの使い方
・電子てんびんや上皿てんびんの使い方・メスシリンダーのはかり方(水の体積=量)を知る。(6)水溶液の重さ(本時案あり)
塩を水に溶かすと、重さはどうなるか。課題③水の重さは300グラムです。食塩20グラムを入れたら全部溶けました。水溶液の重さはどうなるでしょうか。
ア.300g
イ.300gよりほんの少し重い。
ウ.320gよりほんのすこし軽い
エ.320g
⇒食塩水(塩の水溶液)は塩と水の合計の重さになる(質量保存の法則)
粒子概念の導入(イメージ)で理解を深める(イメージ図)
(7)(8)食塩とホウ酸が水に溶ける量(飽和溶液)
課題④食塩とホウ酸は、水に溶ける量にかぎりはあるのだろうか。⇒ 物によって溶ける限度が違うことが分かる。
(9)(10)溶け残りを溶かす
課題⑤溶け残った食塩やホウ酸を溶かす方法について話し合い、調べよう。(食塩やホウ酸が溶け残ったビーカーに水を加えたり,水溶液を温めたりする)⇒ 温度が変われば溶ける限度が変わることが分かる。
(ホウ酸の方が溶ける量が大きく変わる。)
(注)水の量と溶ける量は比例することも確かめる。グラフに表す。
(11)ホウ酸の取り出し方
(課題③の結果を想起して⑥に入る)課題⑥水に溶けたホウ酸を取り出してみよう(方法を考えて実験する)
A水溶液を蒸発させる
B水溶液を冷やす(氷水)
⇒ 物が水に溶ける量には限度(温度)があり、この性質を利用して溶けている物を取り出すことができることが分かる
(12)(13)塩の大きな結晶作り
◎「ふりかえろう」「学んだことを生かそう」を行う。→学んだことを生かして大きな塩の結晶をつくる。
ブックトークを行い、興味関心を高める。
丸型水槽で飽和食塩水をつくります。少しして種結晶になる数ミリの結晶がいくつもでき始めます。
これを取り出し、細かい塩の結晶を除いた飽和水溶液に入れておくと大きくなります。私は、夏休みにつくっています。直径が5ミリぐらいになったら取り出します。写真のように糸で飽和水溶液につるしておきます。コツは、種結晶以外の塩の粒が出来たら取り除くことです。毎年、全員がつくっています。卒業生が「まだ、自分の机の上で育てています」と話してくれたこともあります。
【塩の種結晶を糸で食塩の飽和水溶液につるす】
【大きくなった塩の結晶】
4.教材について
(1)粒子概念について
○学習指導要領の「粒子」を柱にした学習の小中学校での系統は次のようになっている。5年生の学習では粒子の保存性について「ものが溶けるとはどういうことか」を実験を通して理解することが6年生での水溶液の性質の学習に生かされる。そして、こうした実感を伴った理解・個別認識の積み重ねを土台にして、中学校での水溶液の学習につながる。その際、「図や絵などを用いて表現するなどして考察し、適切に表現できるようにする」ために、物質を小さな粒で表すなどのイメージ・モデル図を取り上げた。本校では6年生の「ものの燃え方」の学習で酸素・窒素などの割合を同様に図で表して表現するように指導した。
学年 粒子の存在 粒子の結合 粒子の保存性 粒子のもつエネルギー
3年 物の重さ
4年 空気と水の性質 金属・水・空気と温度
5年 物の溶け方
6年 燃焼の仕組み 水溶液の性質
中1 物質のすがた 【水溶液・状態変化(熱・融点・沸点)】
(溶解・溶解度と再結晶)
中2 物質の成り立ち 【化学変化(化合・酸化と還元・化学変化と熱)】
(物質の分解・原子・分子) 【化学変化と物質の質量(化学変化と質量の保存)】
(化学変化の規則性)
中3 水溶液とイオン 【酸・アルカリとイオン】
○この単元の学習のポイントは、粒が見えなくなり、透明(無色・有色)になる状態が「溶けた」ということをしっかり理解させることである。それを基にして、溶けても水と物質の重さは変わらないことを理解させる。さらに、溶け方はものにより限度が違うことや温度によって限度が変わることを理解させる。学習の順序としては教科書にあるように、
「溶けるとは何か」 → 「保存性」 → 「溶解の限度」 が理解しやすい。
○「溶ける」とは、融解(鉄が溶けてドロドロになる)と、溶解(AをB水などの溶液に溶かす)の二通りがあることを学習の初めに押さえておく。そして、顕微鏡で塩の粒が見えなくなるこ確かめて、見えなくなってもなくなっていないことを1次で学ぶようにする。
○上皿てんびんとメスシリンダーの使い方を全員ができるようにする。また、正しく安全な実験の進め方の指導を行う
(2)学習前子どもたちのものの溶け方についての認識
(昨年度の実態)本単元の「溶ける」ということにどんな経験や認識をもっているか調べるために、学習を始める前に次の様なアンケートをとる。
質問:ものをとかしたり、ものがとける様子を見たことがあった経験を書いてください。
①「(◇◇の時に)○○がとけた。」
②「(◇◇の時に)○○が●●にとけた。」
回答A:そのもの自体が溶けた経験(融解=固体が液体に変化すること)を書いたもの
昨年度の実態では、
・あめとチョコをポケットに入れて、そのままにしたら全体がとけてドロドロになった。
・食事の時に、パンにバターをぬったらとけた。
・夏休みに、ろうそくがとけた。
・冷蔵庫がこわれて、アイスがとけた。(色は変わらない)
・雪がとけた。
・バレンタインの時に、チョコレートをとかした。
・コップの氷がとけた。かき氷がとけた
回答B:A(溶質)をB(溶媒)に溶かした経験
(溶解=溶質が溶媒に分散して均一になる現象。溶媒とは、固体、液体あるいは気体を溶かす物質のこと。溶媒に溶かされるものが溶質で、溶媒と溶質を合わせて溶液という。)
・友達がさとうを水に入れたらとけた。(透明)
・あめを水にとかした。
・食事の時、塩を水にとかした。
・二酸化炭素を水にとかした。
・ポカリの粉を水でとかした。
・フリスクを水にとかした。
・授業の時に、絵の具を水でとかした。
・調理実習の時に、みそを水にとかした(茶色)
・粉末スープをおゆでとかした。
・チョコレートのかけらを、おゆにとかした。
・食事の時に、砂糖を紅茶にとかした。
・メントスをスプライトでとかした。
・ラムネをコーラでとかした。
・ガストで、カルピスを炭酸水でとかした。
・おやつのときに、マシュマロをココアにとかした。(うす茶色)
・あついお茶をのんだ時に、氷をお茶にとかした。
回答C その他
・冬の時に、むずかしい問題がとけた。・・・解決したことを「とけた」と表現子どもたちは、普段の生活の中で物質自体の温度が上がって「とける」融解と、ものが液体に「溶ける」溶解の両方を合わせて、「とける」ととらえている。この単元では、「○○が●●にとける」という溶解について学習するので、まずアンケート結果を見せて、その区別を考えさせ学習をスタートさせる
〈子どものアンケートとその活用〉
質問:ものをとかしたり、ものがとける様子を見たことがあった経験を書いてください。
「(◇◇の時に)○○がとけた。」 「(◇◇の時に)○○が●●にとけた。」
5年●組 アンケート
・あめを口の中でとかした。
・グミをとかした。
・ホットケーキの上でバターがとけた。
・チョコをとかした(うす茶色)
・アイスがとけた。
・墓参りでろうそくが自分でとけた。
・食べたものが胃でとけた。
・ハンダづけで、ハンダごてでとかした。
・ココアのもとをホットミルクにとかした。
・みそをだし汁にとかした。
・ココアの粉をお湯にとかした。
・塩を水でとかした。(とう明)
・板チョコをおゆにとかした。
・ラムネを水にとかした。(水色)
・家で、さとうを水にとかした。
・薬をお湯にとかした。
・砂糖を紅茶にとかした。
・湯船に入浴剤をとかした。(白・緑・赤・ピンク等)
・メロンソーダの素を水にとかした。
・絵具を水にとかした。
・暑かったのでジュースの中の氷がとけた。
・ポカリの粉を水にとかした。
5年▲組 アンケート
・遊んで、プラスチックをとかした。
・あめとチョコをポケットに入れて、そのままにしたら全体がとけてドロドロになった。
・食事の時に、パンにバターをぬったらとけた。
・夏休みに、ろうそくがとけた。
・冷蔵庫がこわれて、アイスがとけた。(色は変わらない)
・雪がとけた。
・バレンタインの時に、チョコレートをとかした。
・コップの氷がとけた。かき氷がとけた。
・友達がさとうを水に入れたらとけた。(透明)
・あめを水にとかした。
・食事の時、塩を水にとかした。
・二酸化炭素を水にとかした。
・ポカリの粉を水でとかした。
・フリスクを水にとかした。
・授業の時に、絵の具を水でとかした。
・調理実習の時に、みそを水にとかした(茶色)
・粉末スープをおゆでとかした。
・チョコレートのかけらを、おゆにとかした。
・食事の時に、砂糖を紅茶にとかした。
・メントスをスプライトでとかした。
・ラムネをコーラでとかした。
・ガストで、カルピスを炭酸水でとかした。
・おやつのときに、マシュマロをココアにとかした(うす茶)
・あついお茶をのんだ時に、氷をお茶にとかした。
5年◇組 アンケート
・氷がとけた。
・氷ぶどうを食べる時に、とけた。
・朝ごはんの時、バターをパンにぬってとかした。
・食べたものを胃でとかす。
・プリンをつくる時、さとうをフライパンでとかした。
・雪を手でとかした。
・ろうそくに火をつけたらとけた。
・アイスを長時間冷蔵庫に入れてなかった時にとけた。
・ペットボトルを火でとかした。
・ラーメンが熱い時、汁の中に氷を入れてとかした。
・みそを水にとかした。
・さとうが、こうちゃにとけた。
・チョコレートをおゆにとかした。
・ココアパウダーを牛乳にとかした。
・粉薬を水でとかした。
・魚の水づくりで、カルキぬきを水でとかした。
・入浴剤がおゆにとけた。
・塩を水にとかした。
・カレールーを湯にとかした。
・ガムシロップをつくる時、さとうを水にとかした。
・カップラーメンの粉末スープを湯にとかした。
・図工の時、かたまった絵具に水を入れてとかした。
・コンソメスープのもとを水にとかした。
この資料を、拡大コピーして黒板に掲示して話し合いに使う。
(3)学校図書館の本の活用
○学校図書館を活用した学習。本単元は、実験中心に実感を伴った体験が中心で、調べ学習を位置付ける単元ではないが、本単元の学習の最後にある結晶作りに関連した児童書を活用したり、ブックトークを行ったりして関連図書に目を向けるように促す。「物のとけ方」(学研)・・・溶け方の観察と様々な結晶作り
「水と空気」(岩崎書店)・・水の溶けるもの、物質の変化など
「とけているものひみつはっけん」(草土文化)「とける」をキーワードに6年につながる
「サイエンス教室5年」(国土社)・・「水にとけるってどういうこと」を実験で確かめる
「もしも原子がみえたなら」(仮説社)
「とてもとても小さい水の分子」の世界にふれる
「塩の絵本」(農文協)・・・塩の結晶をはじめ塩について発展的に学ぶ
その他
(4)教材の取り扱い
〇1時間目
事前にとったアンケート結果を模造紙に印刷して黒板に貼って経験したことを発表させる。話し合いで融解と熔解の二つの仲間わけを行う
教師の話:
①は「チョコがとける」ようにその物の温度が上がってとける(とろける)ことです。
②は「塩を水にとかす」のように、(固体・液体・気体の)物を水のようにそれを「とかすもの」に入れたら「とけた」のですね。これから勉強するのは②です。「とかすもの」を「溶けるもの(液体)に入れて出来たものを溶液といって、水に溶かすときは水溶液といいます。水溶液の性質については6年生で酸性・アルカリ性の水溶液という勉強をします。
〇3時間目 ものが溶ける様子(シュリレーン現象)の観察〈教科書を活用〉
無色透明は食塩で有色透明はザラメ糖で比較観察させる。1Lビーカーに薬さじ4杯で行うと6分程度で完全に溶けていく様子が観察できる。【ザラメ糖をビーカーにつるす】
【溶ける様子:「滝のようだ」と子どもが言った】
〇4時間目
ホール式スライドガラスに食塩の粒を10粒程度のせて、倍率100倍程度の顕微鏡で観察させる。横から友だちにスポイトで水を垂らしてもらって、塩の結晶が丸く小さくなっていき、最後にはスーっと粒が消えていく様子を観察する。2時間目と3時間目の学習の結果から、溶けるとは、「①粒が見えなくなる ②透明(無色・有色)になる」ことだと導き出す。
〇5時間目 課題について
A案 課題:水とビーカーの重さは合わせて300gです。食塩20gを入れたら全部とけました。食塩はなくなったのでしょうか。(教科書)4択 ①全部なくなった、②少しなくなった、③少し残っている、④全部なくなった
⇒ 確かめる方法を考えさせ話し合いで重さを測るやり方を導き出す。
B案 本時の指導案の文言 「・・・重さはどうなるでしょう。」
食塩がどうなったかに焦点を当てるのではなく下記のように理解する上では適切
【溶質の重さ】+【溶媒の重さ】=【水溶液の重さ】(質量保存の法則)
どちらをとるにしても、4択式にしてまず自分の考えを書き、話し合いを通して友だちの意見をもとにノートに加筆させる。
〇イメージ・モデル図について 本時案参照(児童用用紙と板書用の用具を作成)
〇12・13時間目 大きな塩の結晶づくり
事前につくっておいた「結晶の種」を糸で各自で牛乳瓶につるす。昨年度は、1週間後に再度小さな結晶を取り除くことで学期末には大きな結晶ができた。○ブックトーク 電子黒板も使って写真を中心に行い図書館に関連図書コーナーを設置。
【結晶づくりは、飽和水溶液ををつくるので教科書の図表活用】
(4)科学技術館メールマガジンより◇第486号 2014/6/18発行
■「溶ける」とは?■砂糖や塩は水に溶けますが、小麦粉はどうでしょうか? 料理のレシピなどでは「小麦粉を水に溶かす」という表現を使うようですが、実際にやってみると、ダマができたり、液体にならなかったりと、砂糖や塩と同じように溶けたという感じがしません。もちろん、砂糖や塩でも果てしなく水に溶けるわけではなく、限界があります。小麦粉の場合はその限界がすぐやってきてしまうのでしょうか。
化学の世界では、溶かすものを溶媒、溶かされるものを溶質と呼んでいます。上記の例では水が溶媒で、砂糖や塩などが溶質となります。そして、溶質が溶媒に溶かされたものを溶液と呼んでいます。砂糖水や塩水などが溶液ですね。小麦粉水というのは聞いたことがないですが、小麦粉の場合はどうなのでしょう。
砂糖水を例にしてみましょう。溶液(砂糖水)の中では、溶質(砂糖)は1分子ずつバラバラになっていて、その周りを溶媒(水)分子が取り巻くような状態になります。まさに溶け込んでいる状態ですね。一方、小麦粉はどうでしょうか。小麦粉を水に溶かそうとしても、小麦粉の分子は1分子ずつバラバラになってはいませんし、小麦粉の分子の周りを水分子が取り囲む状態にもなっていません。その違いは何なのでしょう。
砂糖は、ショ糖が主成分で、グルコースと呼ばれるブドウ糖などの還元糖を副成分とする糖の名称です。ブドウ糖や果糖は単糖類と呼ばれ、ショ糖はブドウ糖と果糖が1分子ずづ結びついた糖で二糖類と呼ばれています。
他方、小麦粉の主成分は7割強のデンプン(糖質=炭水化物)でタンパク質も1割程度含まれています。デンプンは多くの単糖類で結合された多糖類の仲間で、デンプンに含まれるアミロースと呼ばれる多糖類は数百個のブドウ糖が集まってできたものなのです。アミロースは熱水には溶けるのですが、温度が低くなると溶けにくくなります。小麦粉はアミロース以外にもタンパク質やその他の成分があり、砂糖に比べると溶けにくいのです。
そうそう、例えば、タライの中で、デンプンでできている片栗粉を水と2対1の目安で混ぜると、水の上を歩ける(走れる?)ダイラタンシーの実験ができたりもします。これも片栗粉が溶液としてちゃんと溶けていないからできる実験です。
ところで、アミラーゼあるいはジアスターゼという酵素を知っていますか。だ液に含まれる消化酵素で、学校の理科の実験の時にこの言葉を聞いた人もいるのではないでしょうか。ご飯やお芋を用意して、口の中でよく噛(か)んだものと、口の中に入れなかったものにヨウ素液やベネジクト液との反応を調べてみませんでしたか。そう、だ液にはデンプンをブドウ糖にする働きを持つものがあります。食事の時にはよく噛(か)んで食べてみると、糖であるブドウ糖の甘さを味わえるかもしれないね。 執筆者:高原章仁 経営企画室
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