2021-09-25

GIGAスクール構想とは?(教育カフェ資料)

GIGAスクール構想って何?

小中学生に1人1台のタブレットが配布されました。これはGIGAスクール構想に基づくデジタル教科書導入のためのです。しかし、コロナ禍の中、事前に学校内での話し合いや準備もなく、急に配布されたため、困惑も広がっています。そこで先生方の学習会や保護者・市民の方の教育カフェ等の懇談会で活用できるようにこの資料をつくりました。

1.デジタル教科書とは?(タブレットは、このために配布)

デジタル教科書と紙の教科書との違いは何か?その機能についてみてみましょう。

デジタル教科書とは?

2.デジタル時代の世界の教育 「海外教科書制度調査研究報告書」より

公益財団法人教科書研究センターでは20182019年にかけ、42か国1地域を対象に教科書制度を調査し、「海外教科書制度調査研究報告書」を刊行しました。これを見ると、世界の教科書をめぐる動きと日本の動きの違いがよくわかります。その特徴ををみてみましょう。 

デジタル時代の世界の教育 

3.経済界(経団連)の提言・経済産業省主導のGIGAスクール構想

何のために・誰によってGIGAスクール構想がつくられてきたのか、みてみましょう。

経済界(経団連)の提言・経済産業省主導のGIGAスクール構想

4.タブレットの使用が始まった学校現場の実態は・・・・

各地の先生方に取材して、学校現場の様子をお聞きしたものをまとめました。
タブレットの使用が始まった学校現場の実態

5.地域でわたしたちが出来ることは?

学校・保護者・市民のそれぞれの立場で、子どもにとって何が大切か話し合いましょう。
地域でわたしたちが出来ることは?

作成:中山和人(北多摩東教育センター・東京民研共同研究者)2021年8月


25回 おりぞめ

2021年7月9日

第25回 おりぞめ

しょうじがみを そめて、たのしい ものを つくってみましょう。
ざいりょうは、
えのぐと、しょうじ紙
(100円ショップやホームセンターにあります)

①あか・あお・きいろの 色を つくります。
②色をまぜて、みどり・だいだい・むらさきを つくります。
③かみを おります。
④おりぞめを します。
⑤かみを ひろげて かわかします。
つくりかたの どうがは ここをクリック(4分)
ざいりょう

色水をつくります


おりぞめ


おりかたで もようのかたちが かわります
おりぞめの かみで つくってみましょう。
ブックカバー、うちわ、ペン立て
そして、 すてきな ランプ
【LEDイルミネーションランプは、100円ショップでうっています。】
さくひん



LEDイルミネーションランプで つくります

24回 カマキリ・アゲハ・コオロギ

2021年7月2日

第24回 カマキリ・アゲハ・コオロギ
こんちゅうの たべもの


なにを たべるのかな?
カマキリは
いくつ たまごをうむの?
なにをたべるの? 

アゲハチョウは
ようちゅうは、なにを たべるの?
花のみつは どうやって すうの?

コオロギは
どうやって なくの?
うちで かうときの エサは?

この どうがを みてごらん

30回 セミ

2021年8月13日

第30回 セミ 

セミのなきごえ

なつやすみに セミの なきごえを ききましたか?
あぶらぜみは、ジ~ジリジリ
くまぜみは、シャー シャー シャン
みんみんぜみは、ミーンミンミン

なくのは、オスだけです。メスは、なきません。
オスは、「ぼくは つよいんだぞ~」と、メスに きにいってもらえるように がんばって ないています。

メスは、つよいこえで なく オスが すきなようです。だから、オスは ほかの オスに まけないように 大きな こえで ないています。

まえに おしらせした コオロギは、はねを こすりあわせて 音をだしていました。でも セミは、ちがいます。
NHKforschool「いろいろなセミ」動画(2分)
コオロギ


アブラゼミ

アブラゼミを つかまえたら おなかの りょうがわを  みてごらん!

オスにだけ、えに あるような かきのたねを はんぶんにしたような ばしょが あります。
ここの きんにくを ブルブルと ふるわせて 音が でます。

電動歯ブラシ(でんどうはブラシ)より もっと はやく うごかして 音を出しています。
おなかの中が からっぽなので スピーカーのように 音が 大きくなります。

せみは、目が 5つも あります。
あたまの りょうがわに 大きいのが2つ。
さきのほうに 小さな目が 3つあります。
こんど、みつけたら、音の でるところや 目を みてごらん。

29回 ジャガイモ

2021年8月6日(第29回)ジャガイモ

クイズ

【クイズのこたえ】

むかし、はたけの さくもつが とれなくて、みんなが くるしんでいました。しかし、ジャガイモは えいようがあるのに、たべたことがないので、だれも つくりませんでした。

フランスの ルイ16世(せい)という 王さまと、マリー・アントワネットという おきさきが いいことを かんがえました。

マリー・アントワネットは、ジャガイモの花かざりを あたまに つけました。みんなが、まねをしたくなりました。

ルイ16世は、国王(こくおう)のはたけに ジャガイモをうえて、かんばんを たてました。

「これは 王さまの おいしい たべものだから、ぬすむな」
すると、
「そんなに おいしいのかな?」
と、よる、はたけからぬすんで、たくさんの 人が ジャガイモを うえるように なりました。

おいしいので、みんなが、ジャガイモを たべるようになりました。
ジャガイモの 花かざりを つける人も ふえました。

こうして、じゃがいもは、くにじゅうに ひろがりました。


チリモンずかん





28回 バッタ

2021年7月30日(第28回)

バッタ

にているバッタの みわけかた

オンブバッタは、
いつも 大きなメスが、小さなオスを おんぶしています。
メスは 4センチぐらいで かおに イボイボがあります。
草なら なんでも食べます。
アサガオの はっぱも たべます。

ショウリョウバッタは、
メスは、8センチぐらいに 大きくなります。
かおは、すべすべ!
たてに すじのはいった ほそながいはを たべます。
(おんぶしていることもあります)

しゃしんのようにして そだてると、たまごを うみます。
1しゅうかんぐらい そだてたら にがしてあげましょう。
3しゅるいのバッタ


バッタのそだてかた
牛乳パックでつくってみよう
「とびはねるパッチン」
【ようい】 牛乳パック わゴム ハサミ のり
つくりかたは、このどうがを みてください(3分)

https://youtu.be/hTGf3pOnFYA 

しゃしんの かたがみを プリントして、 つかってみてね。
パッチンのつくりかた

パッチンのかたがみ

27回 ボウフラ

2021年7月23日(第27回)

ボウフラ

かゆい「カ」 にくい「カ」
それでも、見たい「カ」

「かゆい! カに さされた」
って、いやな おもいを したことがあるでしょう。
「カ」(蚊)は、にくらしいですね。

たまごから かえった ようちゅうを ボウフラと いいます。
ときどき、すいめんに あがって、いきをしています。

ぼうを ふっているように 水の中で うごきます。
だから 「ボウフラ」っていう 名前が ついたとも いわれます。
カブトムシと おなじじゅんじょで そだちます。
たまご→ようちゅう→さなぎ→おや(せいちゅう)

蚊の さなぎを オニボウフラと いいます。
さなぎなのに うごきます。

うえきばちの 下の おさらに すこしだけ 水が のこっていると、たまごを うみます。
いちどに 200こも うみます。だから、蚊に さされたくなかったら のこり水が ないようにしてね。

でも、水の中には プランクトンっていう すてきな 小さな いきものも たくさん いきています。
どうがで うごいているのは フナガタケイソウと いいます。けんびきょうで 100ばいにして みました。

ようちゅう⇒さなぎ




2021-09-24

デジタル教科書とは何か(報告)教科書シンポジウム

第53回 教科書を考えるシンポジウムへの報告
デジタル教科書とは何か(レジュメ)


出版労連教科書対策部事務局長
子どもと教科書全国ネット21常任運営委員
吉田典裕

1.デジタル教科書の定義

●デジタル教科書とは何か:2018年の学校教育法等の一部改正等による制度化に伴い、文科省が定義【資料1】。これにより、「指導者用デジタル教科書」や、教科書発行者(教科書会社)が発行してきた、いわゆる「デジタル教科書」は「デジタル教科書」の定義から外れる。
●定義で注意すべき点:「デジタル教科書」とはコンテンツ(内容)のみであること。それを動かすためのOS(基本ソフトウェア)や応用ソフトウェア(アプリ)、デバイス(機器)は含まない。

2.デジタル教科書の現状

●GIGAスクール構想の前倒しで今年度から使用開始、しかし使用率は10%未満(現在はもっと上昇してい可能性あり)。【資料2】
●デジタル教科書のあり方については、中央教育審議会初等中等教育部会に「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」を設置(2020年7月)、ほぼ毎月1回のペースで開催。今年7月末までに「最終報告」をまとめる予定。6/8付で「第一次報告」を公表。→これを中心に検討する。
●「2024年度から本格実施」の内実
・諸制度が間に合わないまま見切り発車:検定はなし(教科書発行者が紙の教科書と同一内容のものを作成しているとして)、使用義務、価格、供給体制、等々 →3年間でまずは現場に慣れさせる。
・「デジタル教科書を使え」というプレッシャーが強まるのではないか。
●デジタル教科書を発行できるのは教科書会社だけ。しかしビューア(コンテンツを見るためのソフトウェア)は統一されていない。=操作が会社によって異なる。【資料3】
●有効性の実証研究は不十分なまま
・文科省は2019年度から「実証研究事業」を行っているが、結果の評価は検討会議でもあまり議論されないまま。にもかかわらず、今年度は「普及促進事業」を実施。
・検討会議で報告された実証事例は、6校を対象に3か月間行われただけ。それも検討会議委員によるものなので、客観性に疑問あり。
・内訳は公立小学校2校(埼玉県、東京都)、同中学校1校、私立中高校1校、同高校1校で「学習者用デジタル教科書を使った授業と、紙教科書を使った授業を、同一クラス、同一教員で類似の授業で実施し、比較、検証を実施する」、特別支援学級1クラスで「特別な支援を必要とする児童に対して学習者用デジタル教科書をどのような場面で活用することが効果的であるか、観察、ヒアリング等を通して実証する」というもの。
・デジタル教科書が効果的だったという結論が最初からあったという印象を免れない。

3.デジタル教科書の機能だけでは不十分――「デジタル教材との連携」

●「デジタル教科書が備えるべき機能」【資料4】 →実際には、ほとんどの機能はすでにある。しかしまだこれで確定したわけではない(資料4下線部参照)
●デジタル教科書」とデジタル教材の異同【資料5】
・学校教育法第34条②の規定にない機能やコンテンツが加われば、「デジタル教材」扱いとなる。
・デジタル教材は学校教育法第34条④に該当。
・紙の教科書にない機能やコンテンツの例:動画、人間の音声による読み上げ、教科書に掲載されたキャラクターが動く、VR(Virtual Reality、仮想現実)、AR(Augmented Reality、拡張現実)等々。
・多くの教科書発行者はデジタル教科書単体ではなく、「デジタル教科書+教材」という形態で販売(=デジタル教科書の不十分性の証明)。
・検討会議もデジタル教科書と「デジタル教材との連携」を打ち出す。【資料6】

4.デジタル教科書をめぐる諸制度

(1)検定と教科書としての位置づけ

●「2024年度から本格導入」というが、検定は間に合わないため先送り【資料7】
●次々回検定の際には、紙の教科書同様に検定を導入する可能性大
・今のところ「使用義務」は課していないが、今後どうなるかは不明。
・紙の教科書全廃には文科省は慎重、しかし検討会議ではそのような意見が出ているとの情報あり。
●現在も、2024年度も「使用義務」はなし。しかし「全部をデジタルで置き換え」てもよい(紙の教科書と同一内容であることが根拠)。
●特別支援学校/学級では、通常学級よりニーズもあり導入が急がれる
・「障がい」別に異なる仕様が必要と思われる(視覚、聴覚、肢体不自由)が、そのようにつくり分ける人的資源(余裕)がある教科書発行者は限られる。法的整備もなされていない。

(2)配信と販売の形態

●想定される3つの配信方式【資料5、8】
●①、②の場合:教科書使用年度終了後の配信をどうするのか、検討会議で結論は出ていない(検討会議では主にライセンス期間の観点から問題提起されている)
●紙の教科書(給与)と違い,貸し出し(貸与)=要返却。端末機は私立学校では1/2(上限4万5千円)を補助(2021年度補正予算)。保護者は「端末機貸出使用確認書」などを提出。高等学校は補助対象外(BYOD方式を導入。低所得家庭は4万5千円を補助)。→各メーカーは,この額以下の機種を導入か。「安かろう悪かろう」?
●販売(購入)可能対象は学校又は教育委員会=個人では購入できない。著作権法との関係もあるので、そのことを単純に批判はできない。著作権法改正を含めた今後の議論が必要
●デジタル教科書が主流となった場合、従来の教科書供給ルート、特にインターネットに詳しくなく取り扱えない教科書取扱書店(学校の前にある文具店など)は、大きな打撃を受ける

5.諸外国のデジタル教科書の状況と日本の立ち遅れ

(1)デジタル教科書の導入と活用は世界的趨勢

●EU諸国では、ほとんどの国でデジタル教科書がすでに使われている。エストニアの例:「2008年の教育改革では、紙の教科書をすべてデジタル化することが定められた」【資料9】
●アジアでも韓国・中国・マレーシア・インドなどでは日本より普及し、活用されている
●北米やオセアニア、さらに中米諸国でも同様の傾向で、アフリカでもケニア・南アフリカなど*では、デジタル教科書の導入の流れは進んでいる
*ルワンダは「ICT立国」をめざし、JICAや日本企業(たとえば株式会社さくらなど)が支援している。ただし、管見のかぎりでは、初等中等教育レベルでは、一部で導入は進んでいるものの、まだそれほど普及しているわけではないもよう。
●このような世界的な流れと比較すると、日本のデジタル教科書をめぐる状況は、お世辞にも進んでいると言える状況ではなく、政府や経済界の焦燥とも言えるこの間の動きの背景にこうした状況があることは容易に見て取れる【資料10】
●導入されている諸国では、日本でいう「デジタル教材」の内容が含まれている。→「紙の教科書と同じ」=皮肉にも、日本の検定制度がデジタル教科書の普及の阻害要因になっている
●経済産業省が、文部科学省を叱咤・督促してICT教育導入を進めるという構図がつくられた
・「未来の教室研究会~LEARNING INNOVATION~」を立ち上げ、「提言」を行う(2018~2019年度)。「実証事業」は現在も継続中。cf. https://www.learning-innovation.go.jp/
・「個別最適化」は経産省が主導したスローガン。一方、文科省は「子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現」(2019年12月、萩生田文科大臣)、「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」(2020年段階の諸文書)→「誰一人取り残すことのない、個別最適化された学びの実現」(検討会議「第一次報告」)と変遷。いつの間にか「公正に」が姿を消した
・同研究会の一部委員は学校解体まで論じている。最も先鋭的なのは佐藤昌宏・デジタルハリウッド大学大学院教授(同氏は企業出身)。
●経済界はさまざまなレベルでのデジタル・テクノロジーの担い手を育成する必要に駆られている。→最小限の企業負担で進めるためには学校教育を「改革」しなければならないと考えていることは容易に推測できる。経済産業省がICT教育推進で文科省より積極的な理由はここにあると考えられる。→e.g. STEAM教育(当初はScience, Technology, Engineering and Mathematics=科学・技術教育を重視するとしてSTEMと言っていたが、ひらめきや創造性を象徴する語としてArtを追加し、STEAMと変更)

(2)ビジネスチャンスとしてのデジタル教科書

●学校を市場とした企業間競争は、デジタル教科書ではなくデジタル教材で展開される。教育産業だけでなく、さまざまな企業がデジタル教材の制作・販売に参入することが予想される(すでに参入もしている)。ただしデジタル教材は、グローバルIT企業の市場としては、あまりに狭小。したがってそうした企業の「主戦場」は「学校のICT環境化」に依存することになると予想される
●国内外のさまざまな企業が、日本のデジタル化の後れと人口減少=国内市場の縮小の中で、学校を未開拓の市場=ビジネスチャンスと位置づけている(佐藤学2021、p.21以下を参照)。
・ハードウェアの販路拡大:PCメーカーなど。GIGAスクール規格の機器を、GIGAスクール構想前倒しが決定するや否やただちに売り出した(情報は事前に知らされていた?)。
・教育産業としては、ベネッセなどを挙げるだけではまったく不十分。たとえばイギリスに本拠を置くPearson(ピアソン)グループのような、ベネッセなどとは比較できないほど巨大な、メディア・コングロマリットの参入も予想される。
・GAFA(グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon))をはじめとするICTグローバル企業も。→ e.g. Chromebook
●したがって、デジタル教科書や「学校のICT環境化」を教育産業にとっての関心事であることを中心にとらえるのでは狭い。→「教育ITソリューション EXPO」(略称EDIX。今年は5/12~14、東京ビッグサイト青海展示棟で開催)に出展している企業を見ると、教育産業は相対的に少数で、情報・通信産業や海外の企業が多い。

6.教科書会社の動き

(1)生き残りをかけた企業間競争の激化

●2019年度の小学校教科書採択、2020年度の中学校教科書採択についての各地の教育委員会の会議録によると、QRコードの内容が充実しているか否かが、採択の要素の一つとして扱われているところもある。i.e. デジタルコンテンツは、すでに採択の際に意識されている
●「デジタル教科書を本格的に導入」することになる次回2023年度実施の小学校教科書採択(2024年度用教科書)では、紙の教科書がどれだけデジタルコンテンツとの連携が取れているかが問われることになる。→教科書会社間の競争は、デジタルコンテンツ(QRコードとデジタル教科書)をめぐって激化するだろう
●一方、前述のように、2021年度に向けて、95%の義務教育教科書でデジタル教科書が作成されている。各教科書会社が生き残りのために、何としてもデジタル教科書をつくる必要があると判断した結果
●ところがこれも前述のように、実際の使用率は1割にも満たない=デジタル教科書制作のための投資が回収できていない。これに輪をかけて、文部科学省は各社に低廉に、具体的には紙の教科書と同程度の価格で、供給することを要請
●サーバーのメンテナンスにも、1年で数千万円から億単位の費用が掛かるとも言われている。この経費を回収して生き残ることも、教科書会社間の競争激化の要因となる

(2)教科書会社の淘汰と国家統制の強化か

●デジタル教科書の製造原価をどのように算出するかは、確かに難しい面があるが、文科省が言う「紙の教科書程度」では安すぎることは明らか
●デジタル教科書の制作と供給を断念する発行者が現れても不思議ではない。→教科書発行者の淘汰につながる深刻な事態となる
●それはデジタル教科書において、紙の教科書以上に国家統制が容易になることにもつながる

7.デジタル教科書に対するさしあたりの取り組み案

(1)デジタル教科書とは何かを知る

●まず何より、デジタル教科書にかかわる諸問題についての学習を広げ、広範な市民の間で合意を形成する取り組みを強めることが肝心
●デジタル教科書は教員の教育の自由を拡大するのかどうか:さまざまなことができ、教育内容を豊かにするように見えるが、本当にそうか。ソフトウェアとコンテンツの範囲内での自由(=実は制約されている)なのではないか。その制約をどう突破できるのか
●その際、著作権法との関係を意識しないと足をすくわれる危険もある。著作権法が改正され、被侵害者ではない第三者も著作権侵害を訴えることができる(この点は特に歴史教育で要注意だろう)

(2)子どもたちのメディア・インフォメーション・リテラシーを高める

●デジタル技術が社会に不可欠なものとなっている事実に鑑みれば、子どもたちがデジタル教科書を含めたデジタル・テクノロジーを活用する能力、特にメディア・インフォメーション・リテラシーを人権の一部と位置づける必要がある(UNESCO、 Media and Information Literacy Policy and Strategy Guidelines、 2014)。
●学習指導要領は、専らメディア・モラルの涵養を求めているが、私たちが求めるべきなのは、人権としてのメディア・インフォメーション・リテラシーだと言える。

(3)デジタル教科書を敵視しない

●教科書を敵視したり全面否定したりするのではなく、そのメリットとデメリットを的確に見きわめ、その可能性を引き出す。たとえば次のようなことを考える必要があるだろう
・デジタル教科書を使って、これまでできなかったような新たな学びをもたらす可能性を持っていること。
・特別な支援を必要とする子どもたちや、日本語を母語としていない外国にルーツを持つ子どもたちにとっても大きな意義を持つ可能性があること。

(4)子どもたちの健康への影響を検証させる

●子どもたちの健康、特に目への影響は未解明の部分も多いので、デジタル教科書の長時間使用などによる影響がないのか、医学的な検証を進めさせる(ブルーライトが有害だという言説がしばしば聞かれるが、いまのところそれは医学的に証明された事実ではない)。
・日本眼科医会など「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」
・日本眼科医会 乳幼児・学校保健担当「ICT 教育・GIGA スクール構想と眼科学校医の関わり ●眼科学校医が知っておくべき25のポイント◆」
●前提として、私たちの科学リテラシーを高めることも重要:「脳科学」と言われるものには怪しいものも多い。e.g. 川島隆太・東北大教授の「ゲーム脳」などの言説。民主的な研究者でも信奉者がいるので要注意

(5)学力格差拡大の道具にさせない

●文科省自身、ICT教育やデジタル教科書を巡って「誰一人取り残さない」とうたっている以上、憲法第26条に従って財政保障をきちんと行い、デバイスなどについて、高校も含めて国が全額保障するよう要求する。

(6)デジタル教科書を新たな教科書内容の統制や教科書発行者の淘汰に利用させない

●デジタル教科書への検定が行われる場合、新たな統制を許さない。また価格を抑制して教科書会社の淘汰に利用させない。
●デジタル教科書への対応:問題点は数多あるが、そこにだけ注目し批判するのではなく、学習用「ツール」として位置づける必要もある。e.g.「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」が、「第一次報告」で「障害のある児童生徒や外国人児童生徒等への対応」を挙げている点は要注目。

【参考文献】

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 議事録・配付資料(文部科学省Webサイト)
日本デジタル教科書学会HP(http://js-dt.jp/)
坂本・芳賀・豊福・今度・林『デジタル・シティズンシップ』大月書店、2021
佐藤 学『第四次産業革命と教育の未来』岩波ブックレット、2021
出版労連『教科書レポートNo.63』2020年9月30日
文部科学省「GIGAスクール構想の実現標準仕様書」2020年3月3日
公益財団法人教科書研究センター『海外教科書制度 調査研究報告書』2020年
経済産業省「未来の教室 Learning Innovation」Webサイト(https://www.learning-innovation.go.jp/)
新井紀子『教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社、2019
西田宗千佳『リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ』TAC出版、2012

タブレット:学校現場の実態報告①

タブレットが導入され、使用が始まった学校現場の実態①


中山和人(北多摩東教育センター・東京民研共同研究者)

はじめに

東京郊外のA小学校(児童数500人)の2021年度の教科備品の予算は30万円でした。
授業で使う楽器や顕微鏡など2万円以上の教科備品費の総額です。
一方、この学校にはタブレットに2250万円の税金が投入されました。
このほか校内Wi-Fi環境の整備やソフトの使用料、週3回1回3時間のICT支援員配置費などを合わせると2500万円以上。
なんと学校の教科備品費の80年分以上にもなります。

「Society5.0時代」「予測困難な時代」の掛け声の中で、「新学習指導要領の着実な実施」と「ICTの活用」で「個別最適な学び・協働的な学び」をすすめるという中教審答申の具体化が、急速に始まっている学校の実態を報告します。

目次

◆まず、授業外でタブレットを使い始めた
◆授業での使用が始まる
〔小学校の活用事例〕
〔中学校の活用事例〕
〔支援学級の活用事例〕
◆自主的な工夫での利点
◆数多くの問題点・課題
・Wi-Fi環境等が整っていない・研修が不十分な中でスタートしたための問題
・「タブレットありき」の押し付けに困惑
・生徒指導や健康上の問題
・新たな保護者の負担増
・自治体にとっての財政負担
◆大切ことは、「教員の専門性と自主性が尊重される環境で、ツールとして創意工夫で使う」「よくわかる授業のためのツールとして」
◆寄せられたご意見など(学校・地域の声)

まず、授業外でタブレットを使い始めた

学校・家庭・市教育委員会をつなぐ手段

コロナ禍、様々な活用が始まっている。
タブレットを文房具のように毎日持ち帰っている市もあり、次のような事例が報告されている。
〇生徒の健康の記録を各家庭で検温して打ち込み、学校では担任がタブレットで確認(毎日対応)。

〇家庭への・家庭からのさまざまな連絡。アプリを用いて、家庭からの欠席の連絡。
(中学校では生徒による保護者「なりすまし」連絡が問題になり、折り返し電話で確認している例も)。 

〇「クラスルーム」で保護者会の出席確認、Zoomで保護者会、移動教室の説明会、個人面談を実施。PTAの会議をZoomで開いているところも出始めた。

〇土曜授業をオンライン授業(生徒は家庭で参加)
管理職から「オンラインでやるように」との指示で行われ、道徳授業を実施した事例もある。担任からは、意味がないとの声が寄せられている。

〇市教委主催の各種主任会や初任者研修をZoom。往復の移動時間がなくなり、これは「働き方改革」になると先生方に好評。初任者研修では、浮いた移動時間を使って研修終了後のレポート作成の時間をこの中に組み込んでほしいとの要望もある。

学校での教科外の活用

〇アンケート機能を使って、学級での様々な調査・アンケートに活用する。

〇全校・学年単位の朝会やさまざまな集会、生徒会や委員会・部活紹介などをZoomで実施。離任式をZoomでやった学校では、式の終了後に来校した離任された先生方が廊下を通って全校児童に顔を見せる工夫をしたとの報告もある。

〇学校行事を、個人情報に配慮して遠方から撮影して動画で配信。

〇教科書を忘れたときに撮影して使用。

〇学活の時間に、生徒が投票機能を使う。

〇参観できない行事を写真機能で児童が家庭で保護者に見せる
(展覧会の参観ができないので、児童が自分の作品を写真に撮りながら解説。会場風景は教員が遠方から撮影。それを合わせてタブレットを自宅に持ち帰り保護者に見せた事例)

授業での使用が始まる

〇タブレットの使用は、市・学校・先生間で使用頻度が異なる。研修がほとんどされずに始まったことで多くの問題が起きている。
ICT担当者の研修会を市教育委員会が実施して、その報告を各校で行ったり、校内で集中的に研修機会を設けたりしている。

〇教科学習では、調べ学習の時に課題を検索してまとめるためにタブレットを使うことが多い。

〇音楽では、楽器として演奏に活用。

〇数学では、「クラスルーム」を使って、問題プリントを配り個別学習。最後に回答を配って自己採点をする。

〔小学校の活用事例〕

〇体育で、2人1組になり障害走の走りの様子を互いに撮影して、フォームの改善などの話し合いに生かす。

〇カメラ機能も多く使われ始めた。小学校低学年で、本の紹介をこの機能を活用して行い、互いに見せ合い、「だれが紹介してくれた本を読みたくなりましたか」と担任が発問。友だちの紹介文のどこがよかったかを話し合う。

〇(学活)給食の片づけ方 子どもが動画で撮って発表。「なるほど」とみんなが納得した出来栄え。
給食の片づけ方

〇国語「〇〇さんへのお礼の言葉」。
話し言葉(表現)を書き言葉に変えて残すことが出来る。
文字がまだ書けない1年生やLDで文字の苦手な子どももiPadのソフトを使ってマイクボタンを押すと、子どもがしゃべった言葉が文字になる。
それをGoogleクラスルームの共有掲示板に保存する。

〇(理科)4年:カブト虫の幼虫・蛹の観察
幼虫やさなぎは、飼育中は暗くしておく必要があるので観察が難しい。
学級の生き物を世話する子どもたちがこのようにして飼育して、その動画を撮って、みんなに見せた。
理科4年「季節と生き物 夏」

〇算数eライブラリで課題別問題を解く。一斉休校中には、家庭学習の課題として使った。

〇小学校英語教科書のQRコードでサイトにつながる。
まだデジタル教科書ではないが、正しい発音を(VTRの音声で)視聴する。

〇(調べ学習)「まるうつしはダメ」の指導
「富士山について調べよう」の課題で、サイトを紹介して調べさせた。
サイトの一部を丸写しをした例が多くあり、それらを電子黒板の大きな画面で見せて、書いた内容を質問したが、まる写しなのできちんと答えられなかった。
このことから「まる写しはダメ。自分のことばで・・」と指導した。
それ以降、まるうつしではなく工夫するようになってきた。

〇運動会の民舞を先生が見本で踊る動画
家庭で練習するときにお手本として使わせた。

〇(理科)電気の学習でスプレットシートを活用。
各自が書く⇒それを一覧にして電子黒板の大画面で見る
⇒個人の小さい画面と電気黒板などの大きな画面の両方を使うと効果的。

〔中学校の活用事例〕

〇(国語)調べ学習
調べる課題を出して、生徒が検索して調べて、コピーして、それに対す自分のコメントを書く。1時間に調べ学習20分、それを3回やり、書いたものをグループ内で共有する。順番に発表して、質問に答える。しかし、学級全体での意見共有が難しい。(電子黒板が学年共有なので使いにくい)

〇(社会)QRコーでNHKforSchoolにリンクできて便利だが、課題がある。例えば「アメリカの農業」では、リンクするNHKforSchoolで見ると「大規模・・」だけが出てくる。しかし、今のアメリカの農業は様々な課題がある。そうした資料は見ることが出来ない。タブレットで調べてみることの範囲が限られて学ぶことの制約がある。教師が適切な教材を用意して、豊かに学べるような工夫が必要。

〔支援学級の活用事例〕

〇自分で発言して表現することが苦手な子どもが、タブレットを使って書くと自己表現ができる。

〇子どもが話す様子を動画に撮って一緒に見る。舌の動かし方の指導など個別指導に生かせる場面がいろいろある。

〇NHKforSchoolなどの動画を見る,総合的な学習の時間に日記を書くなど実態に応じて工夫。

自主的な工夫での利点

〇授業中、わからないことを調べることができる。

〇情報・意見を共有しやすい。

〇みんなの前で意見を言うことや作文が苦手な生徒が、タブレットは普段の生活で使っているツールなので、書いたり意見発表したりすることがスムースになる。

〇特別支援級では、「自分で発言して表現することが苦手な子どもが、タブレットを使って書くことで自己表現ができるのでよい」「子どものやりとりにも使える」などの報告もある。

〇コロナが心配で保護者が子どもを学校に行かせていない家庭向けに学校の様子を見せる。

数多くの問題点・課題

①Wi-Fi環境等が整っていない・研修が不十分な中でスタートしたための問題

〇日によっても、時間帯によっても、授業中ネット検索するとつながりにくいことがある。
1時間目はつながりやすいが5時間目はつながりにくいなどの報告もある。

〇多数で使用するとフリーズしてしまい、時間の浪費になっている。授業と校務に支障が出る。

〇市によっては、校内Wi-Fi環境の整備に全市的に追加工事を行ったところもある。当初請け負った業者が「全校で何人ぐらいが一斉に使うとの話を聞かされずに工事をした」と話している事例もある。

〇政府の政策で、短期間で一斉に配布されたので教員への研修がほとんどなく、現場へ丸投げされた。
そのため、感染対策に加えてタブレット対応を急がされ、勤務時間が更に大幅に超えてしまっている。初期設定などでは混乱した学校も多くある。

〇ICT支援員は週に3日程度の数時間で、質問に答えてもらえない例も報告されている。
専門力量のあるICT支援員の配置を求める声がある。市によっては、まだ支援員が配置されていないところがある。

②「タブレットありき」の押し付けに困惑

〇校長や市教育委員会からの一方的な指示で、タブレットありきの次のような指示が各地から報告されている。
「毎学期の校長による授業観察の時(ママ)は、タブレットを使うこと」(人事考課の資料)
「学校公開でタブレット使用の授業をすること」
「夏休み中に市教研部会で●本の動画をつくること」
「校内研究授業はタブレットを活用すること」等。

③生徒指導や健康上の問題

〇子どもも先生も目の疲れがたまる。

〇ルールやマナーについての課題が多い。
「クラスルーム」のソフトでは、「裏クラスルーム」をつくり、特定の仲間で、先生に分からないように、友だちをいじるなどの事例もある。
こうした事件やルール違反が見つけにくいこと、コロナ禍で保護者への説明・啓発の時間がとれないとの声が各地から報告されている。

〇「タブレットの扱いに詳しい生徒が、制限をくぐりぬけて、よくないビデオなどを見ている」「ゲーム等をダウンロードして、休み時間等にやっている」など、配布して日が経っていない中でも、生活
指導面で新たな問題が出ている。

〇研修やルール作りもままならないうちに、急いで配布して使用開始するようにとの指示があったために、多くの問題が噴出している。

④新たな保護者の負担増

〇子どもがタブレットを壊した時の修理費用については自治体によって対応は異なっている。共通しているのは、「学用品の貸与」のため、保護者は、「破損した場合は弁償する」との誓約書の提出を求められていることである。
タブレットは子どもたちに「貸与された」今まで経験したことのない高額な学用品である。

〇自治体によっては、破損した場合の保険に入り、その保険料が新たな保護者負担になっている(年間で約4,000円)。
小中学生が3人いる家庭では毎年12,000円もの負担増になる。
そのため、学校によっては校長から先生たちに「今までの私費負担の部分を減らすように」と教科ごとに画一的な削減の指示が出て混乱したところもある(組合の交渉でその後画一的な削減の指示は是正されたが)今までにない保護者負担増。

〇Wi-Fi環境等が整っていない家庭がある実態から、自宅学習に使う場合の対応は、自治体によって異なる。

〇ある市では、全員のタブレットに公費(市財政)で3ギガ入れて、Wi-Fi環境等が整っていない家庭学習で使うようにしている。3ギガ使い切った場合は学校全体でプールしているので、それで対応するという。

〇ある市の教育委員会からの保護者へのお知らせに次の様なことが書かれていた。
「持ち帰りに当たっての事前準備(Wi-Fi環境整備)のお願い
回線・通信費用は保護者負担となりますが、御家庭にWi-Fi環境があれば、タブレット端末を学校で使用するときと同様にお使いいただけます。Wi-Fi環境がない御家庭におかれましては、この機会に導入の検討をお願いいたします。
なお、就学援助費等受給世帯のうち、Wi-Fi環境がない御家庭には、市への申し込みにより、市が調達したモバイルルーターの貸し出しを行う予定です。今後、就学援助費等受給世帯に対して、ご案内をいたします。」
就学援助を様々な理由で申請していない家庭・コロナ禍で収入が激減して家計のやりくりが大変な家庭・・・。
これはその真っただ中の2021年6月に市教育委員会から出された「ご案内」文書である。

➄自治体にとっての財政負担

〇タブレットを5年間のリース契約になっている自治体も多い。5年後に国が今回と同様な財政措置をするのか教育委員会も注視しているが、先行きは不透明である。

〇タブレット導入による様々な財政負担が自治体に生まれているが、学校教育全体の予算措置をどう確保するかが大きな課題になっている。
ある市では、当初の工事では校内Wi-Fi環境があまりにも悪く学校から苦情が市教育委員会に届いた。そこで、で追加工事をしたところもある。

〇支援員配置費用も多くの費用がかかり、市議会では、議員から、「これだけの出費をするのだからそれに見合った成果を」と求める意見が出され、市教育委員会は、目に見える「成果」を示そうと学校現場に様々な指示が出されている実態も報告されている。

大切ことは、
【教員の専門性と自主性が尊重される環境で、ツールとして創意工夫で使う】

学習会で、ある先生が次の様に発言した。
「便利だからすぐやるのではなく、生徒が書くことのその意義を考えたい。明日の持ち物の連絡や板書を撮ったりすることはどうなのか。書くことで身につけることをもう一度考えたい」
また、こんな発言もあった。
「学校に配置されている支援員のやることと教員のやることの仕分けがはっきりしない。情報担当(複数)がいるが、様々な作業が大変。教員は指導に徹してサポートしてもらうことを明確化することが大切。」

 行政の一方的な「タブレットありき」の押つけが強まる中で、こんな発言もある。
「市教育委員会から市教研の部会で数分程度の動画作成をするようにとの指示で、各部会で10本夏休み中につくることになった。対応は部会によって少しは違うが、これが本当に活用できるのかと職員室では話している。一方的な指示ではなく子どもの実態をふまえて各学校で相談してやることが大切なのに・・」
一方、こんな自治体もある。
「わたしの勤める市では、ICT活用は3年間かけて試行・検討することでスタートしている。市教研の部会でクラスルームを作り、自由な情報交換をはじめ、各学校でそれぞれ工夫している」

【よくわかる授業のためのツールとして】

〇学び合う授業をつくるための課題

タブレットを活用したある授業の流れを紹介する。
①教師が学習課題を出す。
②タブレットを使って各自で検索して調べ、自分のコメントを書く。
③タブレットを使って書いたものをグループ内で共有し、順番に発表して、質問に答える。
④学級全体での情報と意見の共有
この流れで授業をしている先生からの報告では次のような感想が寄せられている。
「タブレットでは画面が小さいので、学級全体で情報や意見を共有することが難しい。電子黒板と合わせて使うと効果的だが、電子黒板は学年共有なので活用しにくい」
私も理科の授業では、電子黒板を多様な使い方をしてきて、その効果を実感している。
個人で使うタブレットと、全員で共有する大きな画面の電子黒板やプロジェクターと併用できれば多様な学習形態が工夫できるという意見が寄せられている。
しかし、多くの地域でその環境がないのが実情である。全国各地で「先進例」として紹介されている実践は、タブレットと電子黒板やプロジェクターの併用が多い。

調べ学習での活用やグループ内での意見や情報の共有という面では多くの報告があるが、学級全体での学び合うという面では多くの課題があるとの声が寄せられている。

〇先進例として文科省や企業が推奨している実践例を教科の本質から見ることが大切である。
理科の場合を例にすると、基礎的な自然認識をその単元・授業でどのように育てるかが大切。しかし、実際にはタブレットをどう効果的に使うかに光が当てられている例が多い。タブレットを活用して学習指導要領の内容の徹底の手段として使われている実践が多くみられる(今後の配信で具体事例の資料提供を予定)

〇「個別最適化」学習の名で、学び合う授業より「同じ時間に子どもの『能力』によって違う学習に取り組む」授業の流れも出ている。
算数・数学のQubena(キュビナ)(注)のようにAI(人工知能)が、子どものつまずきの原因を分析して、個に応じた問題を個別に次々に提示するスタイルの授業も出てきている。

(注)Qubena
①AI(人工知能)を搭載した算数・数学の教材
②AI(人工知能)が、つまずく原因となっているポイントを特定し、それに合わせて問題を次々に出していく「個別最適化」のねらいに沿った教材(子どもは、ノートのように手書き入力する)
③全国100以上の自治体、750以上の公立・私立の小中高等学校で合計20万以上のユーザーがあると宣伝されている。

〇「『デジタル教科書』推進に際してのチェックリストの提案と要望」が8つの学会から文科省に出されている。タブレットの一人1台導入の今こそ、この内容は、深く受け止める必要がある。(一般社団法人情報処理学会・社団法人日本化学会・日本化学会化学教育協議会・社団法人日本数学会・一般社団法人日本地球惑星科学連合・日本統計学会・社団法人日本動物学会・日本物理教育学会)

〔参考〕チェックリストの10項目(詳細は今後、情報提供の予定)
事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時間の縮減につながらないこと。
事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみで科学的事項の学習とすることが無いこと。
事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。
事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。
事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題による演習の比率増大につながらないこと。
事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。
事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識の植え付けが起きないようにすること。
事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配 慮すること。
事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準とすること。

8月の配信資料を読んだ感想や各地の学習会などで寄せられたご意見など

(学校現場・地域の声)
私が講師をつとめた多くの研究会・学習会・教育カフェなどで寄せられた保護者・市民・先生方のアンケート等から、その一部を紹介する。

◇個別も大切だと思いますが、集団で得られることも多いです。個別と集団の両輪で人格形成ができると思いました。ベテランの先生のノウハウをデジタル教材に盛り込むシステムを作った方がいいかもしれないなぁ…、と思いました。

◇自分自身はアナログ人間で、パソコンもタブレットもスマホも持たずに生活しているので、GIGAスクールと言われただけで恐怖を感じてしまうのですが、でも実際の世の中の実体に照らせば、全然使わないというのも無理だろうし、タブレットを使うメリットについても学習しながら、ツールとして使い方を考えていくことが大切なんだな、と思いました。

◇よく分かるツールとして教員が主体となって使い分けることが大切と分かった。そのためにどんな研修が教員として必要か。

◇少人数学級でないとデジタル教科書もタブレット使いこなせない。

◇タブレットを使おうとも使わなくとも「何をねらうのか」が明確な授業が大切だと改めて感じた。

◇タブレットを本当に子どもたちと教職員のために有効に活用するためには、私たちがそれに対する理解と知識をしっかり持っていくことが大切だということあはよく分かりました。また「教科書は自由発行、採択は学校や教員」というのが世界の趨勢で、その流れの中でこそタブレットも効果を発揮するという話に「なるほど」と思いました。

◇「個別最適化」というのは問題だと思います。能力の固定化につながる問題だと思いますが!! また、子どもたちの中にも全く知らない子と、とてもよく知っている子の二極化が見られると思いますが。

◇ICT活用の光と影が理解でき、これからの時代に生きる子どもたちにとって最適な学びを模索し、活用情報をこれからも共有していくことが大切だと思いました。

◇タブレットを活用する場面としない場面を教員が判断していくことが大切だと感じました。

◇タブレットやデジタル教科書、GIGAスクール、心配です。繰り返し書いたりまとめたりしながら脳の発達をする成長期の子どもたちの健康被害は大丈夫かと!話し合い活動も大切です。これからどう付き合っていくか研修していきたいです。

◇ICTを進めるのにずっと教育界が二の足を踏んでいたのに一気に変化して、混乱は隠せません。あわてずに楽しみながら子どもたちと前へ進んでいきたいです。

◇教育で大切なのは「人材育成じゃない!!人格形成だ」という言葉、ずっしりひびきました。教育が集団での交流ができるからこそ民主主義が実体験できるんじゃないかと思う。

◇日本より進んでいる世界のデジタル教科書への取り組みの+-面を知りたいです。子どもの人格の完成をめざすのが大切だと思いました。

◇児童はタブレットが日常の道具となり上手に使っています。ただ、気になるのは視力の低下、対話によるコミュニティがうまくいかない児童は増えるのではないかと今まで大事にしてきたものを同時に行なっています。教師の仕事が簡易になったとはなかなか難しい現状です。経済のための教育に巻き込まれないよう児童の未来にアップデートし続けたいと思っています。

◇GIGAスクール構想や新学習指導要領の改訂等に含まれている、これから先の時代はICTを駆使して使いこなし情報を効果的に表現していく、といった方向性に突き進んでいるのでしょうね。そこには、子どもの発達とか認識を深めていく・広げていくという視点がすっぽりと抜け落ちているように思います。そして、それが、現在の教育方法や子どもとの関わり方に教育委員会や管理職が手も口も上から一方的に口を出し統制してくる(そして、それに対して抵抗できない現場)ことが常態化している中で進められているということが大問題なのでしょう。

◇GIGAスクール構想を批判的に分析していくことと、現在の管理的な学校状況・教育状況(教員の自治が無い状況)を批判していくこと、そしてそれに対するオルタナティブ(対抗軸)をしっかりと繰り返し立ち上げていくことが必要だと考えています。


◇「ロイロノート」?という用語も初めて知りました。とにかくタブレットは渡ってしまったのですから、子どもたちが考えを深めるためのツールにしていけることが大事だと思います。

◇子どもたち個々の人間としての成長のためではなく、戦前は国家のため、今は経済界のための公教育というのは悲しいです。タブレットによる国語でも、子どもたちは、どんなふうに書き方を学んだのかなと思います。学校司書の先生が、タブレット導入後(毎日使っている)、子どもたちはそちらを好み、本を読むということがよりできなくなっていると言っていました。

◇(タブレット活用に学習で)真の学力がつくのか?調べた時にはわかった気になるが、そのままにしておくと忘れてしまうのではないか。正しい言語を身につける、難しいことを簡単に分かりやすく表現できる、手間ひまかけて書くことが大切。

◇「個別最適な学び」の名のもとに能力主義・学力格差が拡大しないようにしなければならないと思う。

◇財政的な負担は?
「GIGAスクール」支援員の数も能力も自治体によって大きな差がある。保護者に新たな負担を強いることもある。(家庭でのWIFI環境整備、タブレット破損時の対応等) 

◇視力等の健康的な問題は?
学校でのタブレット使用によるきちんとしたデータがないので、結論は出せない。これから医学的な検証が必要。学校以外の場でのゲームやYouTube等の利用で問題が起きる可能性の方が高いのではないか。

◇子どもたちにどんな力を身につけさせるのかを明確にして、そのためのツール(道具)として活用していくことが必要だろう。そのために新たな学習方法の研究も必要になってくる。

◇職員室で話していたら、ベテランの同僚が、
「理科の実験で何本もの試験管の中の化学変化の様子を観察させ色鉛筆で書かせてきた。タブレットで写真を撮るよりも、その後の考察の書き方が違う。自分で見て書いて実感して考えるためには、タブレットをどこで使うかよく考えなくちゃね」
と話していたので納得した。

◆緊急事態宣言の地域が広がり、文科省から通知が出ています。各地の教育委員会からは、これに関わり、「オンライン授業」の指示なども出ています。学校現場に知らせる前に保護者宛てのお知らせなどが教育委員会から発信されています。条件整備がない中で、また学校内での話し合いのない中で、保護者から学校に問い合わせや苦情も寄せられ、学校現場で「保護者に説明できない」と困惑している報告が各地から寄せられています。これらについては、後日、報告の機会を持つ予定です。

参考
〇「やむを得ず学校に登校できない児童生徒等への ICT を活用した学習指導等に関してチェックリストや実践事例等を周知しますので、対応をお願いします」
事務連絡 令和3年8月27日
〇(別紙1) 「やむを得ず学校に登校できない児童生徒へのICT を活用した学習指導等を行うためのチェックリスト」
〇(別紙2)
「やむを得ず登校できない児童生徒へのICTを活用した学習指導等_自治体事例
文部科学省初等中等教育局情報教育・外国語教育課
〇「端末利活用状況等の実態調査」令和3年8月
(令和3年7月末時点)(速報値)
文部科学省初等中等教育局情報教育・外国語教育課
〇「感染症や災害の発生等の非常時にやむを得ず学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)」
(令和 3 年 2 月 19 日付け2文科初第 1733 号初等中等教育局長通知)

2021-09-23

デジタル教科書とは何か(資料)教科書シンポジウム

第53回 教科書を考えるシンポジウムへの報告
デジタル教科書とは何か(資料)

吉田典裕

【資料1】デジタル教科書の定義

(1)学校教育法

第34条 小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。
②前項に規定する教科用図書(以下この条において「教科用図書」という。)の内容を文部科学大臣の定めるところにより記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)である教材がある場合には、同項の規定にかかわらず、文部科学大臣の定めるところにより、児童の教育の充実を図るため必要があると認められる教育課程の一部において、教科用図書に代えて当該教材を使用することができる。
……
④教科用図書及び第二項に規定する教材以外の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる。

(2)文科省ウェブサイト「教科書制度の概要」

学習者用デジタル教科書とは、紙の教科書の内容の全部(電磁的記録に記録することに伴って変更が必要となる内容を除く。)をそのまま記録した電磁的記録である教材です(学校教育法第34条第2項及び学校教育法施行規則第56条の5)。このため、動画・音声やアニメーション等のコンテンツは、学習者用デジタル教科書に該当せず、これまでの学習者用デジタル教材と同様に、学校教育法第34条第4項に規定する教材(補助教材)ですが、学習者用デジタル教科書とその他の学習者用デジタル教材を一体的に活用し、児童生徒の学習の充実を図ることも想定されます。

【資料2】デジタル教科書の発行状況と普及状況のギャップ

(中教審デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議「第一次報告」p.2。普及率は2020年3月1日現在)

デジタル教科書の発行状況と普及状況のギャップ

【資料3】発行者によって異なるビューア(義務教育教科書)

発行者によって異なるビューア(義務教育教科書)

【資料4】デジタル教科書が備えるべき機能

(デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議「第一次報告」pp.6-7)
・ピンチイン・ピンチアウトによる拡大・縮小表示機能
・図やグラフや挿絵のポップアップ等
・ペンやマーカー、付箋機能等による、フリーハンド又はキー操作による簡易な書き込み・消去
・書き込んだ内容の保存・表示
・機械音声の読み上げや、読み上げ速度の調整、読み上げている箇所のハイライト表示
・リフロー画面への切り替えによるレイアウトの変更
・背景色・文字色の変更・反転、明るさ等の調整
・文字のサイズ・フォント・行間の変更
・ルビ振り
・目次機能、ページ数の入力による指定ページへの移動、スワイプ等のデバイスを使った任意のページめくり方法の設定
などが挙げられるが、標準的に備えることが望ましい最低限の機能や共通に備えるべき規格について、実証研究も踏まえ、ユニバーサルデザイン仕様の観点や技術の発展も考慮しつつ専門的に検討し、教科書発行者の製作を支援するためにも一定のガイドライン等を取りまとめることが望ましい。

【資料5】デジタル教科書とデジタル教材の異同

デジタル教科書とデジタル教材の異同

【資料6】「デジタル教材等との連携の在り方」

(デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議「第一次報告」pp.7-8)
○学習指導要領の内容で適切に構成されたデジタル教科書と、教科書の内容をより深めたり広げたりするためのデジタル教材を連携させて活用することは、児童生徒の学びの充実に資すると考えられる。なお、デジタル教材は、学校教育法第 34 条第4項に規定する教材(補助教材)であるため、他の補助教材と同様に、「学校における補助教材の適切な取扱いについて」(平成 27 年3月4日付け 26 文科初第 1257 号文部科学省初等中等教育局長通知)も踏まえた適正な取扱いが求められ、多種多様な教材の中から各学校において児童生徒の実態等に応じ使用することが適当である。
○デジタル教科書を利用する大きなメリットの一つが、デジタル教科書を起点としつつ広くデジタル教材等との連携を行い、学びの充実を図るための様々な授業の展開が可能になることである。教材は教科書に比べて相対的に自由度が高く、これまでも教科書に準拠した質の高い教材が発行されてきている。
また、デジタル化されることで多様な教材の迅速な提供も期待される。今後、従来の教材のノウハウを生かした教材や、デジタルの良さを生かした新しい教材など、多様なデジタル教材が、広くかつ容易にデジタル教科書と連携した形で活用されるようになることが期待される。
○これまでのデジタル教科書とデジタル教材との連携の現状としては、教科書発行者がデジタル教材部分を製作し、デジタル教科書と一体的に販売をしているケースがほとんどであるが、今後はより多様な製作主体によるデジタル教材との連携が進むことが考えられる。このため、デジタル教科書とデジタル教材の連携には、学習指導要領のコード付与による連携のほか、児童生徒ごとの様々な学習ツールの窓口となるシステム(学習 e ポータル)を含め、連携が望まれるシステム間の共通規格の整備が必要になると考えられる。先般、学習指導要領のコード化が実現したところであり、今後、学習指導要領、教科書、教材という一連の繋がりを分かりやすくするため、相互の連携を進めることが必要である。
○デジタル教科書とデジタル教材等の効率的な連携について、学習履歴等の教育データの利活用の観点も含め、実証も進めながら総合的な検討を行う必要がある。
紙の教科書や学習者用デジタル教科書等の概念図

【デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討】

(同前pp.13-14)
(前略)
○デジタル教科書であっても、その内容の正確性・適切性を確保するための検定制度が必要であることは紙の教科書と変わりはないが、現状と同様に、デジタル教科書の内容は、検定を経た紙の教科書の内容と同一であることとされるのであれば、デジタル教科書について改めて検定を経る必要はない。
○一方、将来的には、デジタル教科書の内容としてデジタルの特性を生かした動画や音声等を取り入れることも考えられるところであり、今後のデジタル教科書の本格的な導入に向けて、新たな教科書検定の在り方の検討が求められる。そのためには、実証研究の成果も踏まえつつ、今後、そのより具体的・専門的な検討を行うことが必要である。また、デジタル教科書については内容に関する検定のほか、標準的な機能や規格に関する基準を満たすことの確認をどのように行うか、更に障害のある児童生徒のアクセシビリティについても一定の水準をどのように確保するかなどの点も含めて検討することが必要である。
○なお、令和6年[2024]度の小学校用教科書の改訂については、教科書の編集・検定・採択をそれぞれ令和3[2021]年度、4[2022]年度、5[2023]年度に行う必要があり、実際には教科書発行者において既に準備が進められている状況にある。これを踏まえれば、検定制度の本格的な見直しについては次々回の検定サイクルを念頭に検討することが適当と考えられ、令和6年度時点においては、デジタル教科書の内容は、紙の教科書の内容と同一であることを維持することが基本と考えられる。
○この方針によるとしても、デジタル教科書には、文字や図表等の拡大や書き込み等をはじめとする様々な機能が付くとともに、紙の教科書であれば教科書の内容と関連のある動画や音声等の様々な教材にアクセスするには、QR コードを読み込む必要があるが、デジタル教科書ではインターネットに接続した状態でより円滑にそれらを活用することができるようになることから、児童生徒の学びの充実に相当程度資するものと考えられる。また、令和6年度時点においても、前述のような多様で迅速な提供が可能なデジタル教材との連携が期待される。

【資料8】紙の教科書とデジタル教科書の供給形態


【資料9】エストニアでのデジタル教科書の現状

(公益財団法人 教科書研究センター『海外教科書制度調査研究報告書』、2020年3月31日、p.264)
「2008年の教育改革では、紙の教科書をすべてデジタル化することが定められた。現在[2019年―引用者]は、紙の教科書をPDF化したレベルではなく、2020年頃を目処にデジタルソリューションとして再構築することを目指している。教育研究省は、教員のデジタル技術を高めるため後述のとおりHITSA*に教員研修を展開させている。例えば、学校レベルでのICT活用について、HITSAが『School Mirror』と呼ばれる診断を行い、学校ごとの課題をポートフォリオ形式で蓄積している」。
* HITSA:Hariduse Infortechnoloogia Sihtasutus。1997年にエストニア政府、タルトゥ大学、タリン工科大学、エストニア・テレコム、エストニア情報通信技術協会によって設立された「経済およびしゃk愛発展のためにあらゆる教育段階の卒業者がデジタル技能を獲得し、教授・学習におけるICT利用の可能性を高め、すべての教育段階におけるICT利用の質的向上を目指す団体」(前掲書、p.259)

【資料10】日本経団連の要求

(日本経団連Webサイト、2020年9月18日より抜粋)

EdTech推進に向けた新内閣への緊急提言
~With/Postコロナ時代を切り拓く学びへ~

Ⅰ.はじめに

経団連は本年3月に提言「EdTechを活用したSociety 5.0時代の学び ~初等中等教育を中心に~」を公表し、Society 5.0時代に求められる人材像を提示するとともに、その人材を育む手段であるEdTech活用に向けた環境整備を求めた。その後、新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、多くの学校が臨時休業となり、授業を継続できないことが大きな社会問題となった。こうした状況を受けて、オンライン授業などのEdTech活用が大きく脚光を浴び、政府も「GIGAスクール構想」の前倒しを表明し、小中学校の一人一台端末の早期実現や、学校・家庭での学習のためのネットワーク環境の早期整備等が進むこととなった。

このようにコロナを機にEdTechへの注目が高まった一方で、ハード・ソフトの面でも、これを活用する教育人材の面でも多くの課題が残っており、EdTechによる教育の変革には程遠い状況にある。自治体間、学校間、家庭間でEdTech活用の成否が分かれ、教育格差が拡大し続けている。教育機会の平等を保障することは、公教育の重要な役割のひとつである。コロナを機に社会が大きく変革する時代に、すべての児童・生徒の学びを止めずに質の高い授業を継続し、新たな時代を切り拓く人材を育てていくためには、中央政府がイニシアチブを取り、EdTech活用環境の整備を迅速に行うことが求められる。

経団連は本年7月公表の「Society 5.0に向けて求められる初等中等教育改革 第一次提言 ~withコロナ時代の教育に求められる取組み~」#4でも短期的に求められる教育改革の取り組みを提言した。本緊急提言では、今後1年以内にすべての公立小・中・高等学校においてEdTechの実質的な活用を確実に開始するために、財政措置等、早急に実施すべき施策を提言する。

Ⅱ.新型コロナウイルスと学校教育・目指すべき学びの姿

1.新型コロナウイルスと学校教育(略)

2.目指すべき学びの姿

EdTech活用はコロナ禍における緊急対応や教育機会の平等を保障するという側面だけではなく、提言「EdTechを活用したSociety 5.0時代の学び」で示した通り、Society 5.0時代に向けた中長期的視点でも取り組むべきものである。

EdTechによって、AIドリルによる児童・生徒一人ひとりの学習進捗や能力に応じた個別最適化学習やデジタル教科書などの活用も推進できるため、従来の「教科教育」はより効果的かつ効率的で幅の広い学びが得られるものとなる。また、EdTechの活用がもたらす教科教育の効率化や教員の校務負担の軽減などによって生まれた新たな時間を、STEAM#6教育や成果物を創作するプログラミング教育などの、端末やITスキルも活用した「探究型学習」にあてられるようになる。(中略)

Ⅲ.必要となる環境整備

学びを止めずに格差拡大を防ぐため、そしてEdTech活用を前提とした教育へと舵を切るためには、EdTech活用の環境を一刻も早く整備しなければならない。地方自治体の財源等には限界があるため、第3次補正予算等も含めて、必要な環境整備に向けた財政措置を速やかに講じる必要がある。教育は国の礎であるため、一時的な措置だけではなく、十分な規模の予算を継続的に投じることが求められる。(中略)

1.ハード面の整備

(1)高校生の一人一台端末整備

GIGAスクール構想の前倒しにより、小中学生への一人一台端末の整備が進んでいるが、高校生においては学校のネットワーク環境の整備だけにとどまっている。各家庭のICT環境の差が学力の差につながることなく、すべての高校生がSociety 5.0時代に求められるスキルを身に着けられるよう、来年度から高校生においても一人一台端末の整備を国費投入によって早急に推進していくべきである。


(2)通信費用の手当て

一人一台端末の整備を早急に進めるとともに、学校への持ち込みや、オンライン授業や宿題のために自宅で使用する家庭用端末のデータ通信費やモバイルルータにかかる費用(BYODにかかる通信費用)などについては、特に経済的に困窮している家庭などに対して、当該費用の一定額を手当てすることが必要である。


(3)端末の整備にかかる諸費用の手当て

多くの自治体の財政は逼迫しているため、小中学生の端末購入費用の補助だけでは、ICT環境が完備されない状態にある。キッティング作業やセキュリティ対策、破損を保障する保険、買い替え等の端末にかかる諸費用への継続的な補助が必要であり、毎年の当初予算による予算措置を求める。

(4)教育のICT化に向けた環境整備5か年計画予算の執行(略)


2.ソフト面の整備

(1)教育アプリの費用手当てとEdTech導入補助金の拡充

教育アプリやオンライン副教材は問題演習に特化するのではなく、映像やアニメーションを用いて単元や概念の理解にも利用することが可能な教材を用いることにより、新型コロナウイルスの再拡大への備えや格差拡大の食い止めなど、大きな効果が期待できると考えられる。

GIGAスクール構想により端末購入費用の補助が付いたことで、ハード面の環境が整備される見込みは立っているが、教育アプリを購入する資金がなく、EdTechを実践できない学校も少なくない。紙の教材からデジタル教材への転換を図るべく、政府はアプリの費用を、複数年度にわたって手当てすべきである。また、「EdTech導入補助金」を拡充することで、教育アプリやEdTechを活用するモデル先進校を増やし、EdTechの普及を促進していくべきである。また、政府でも全国の児童生徒が学習・アセスメントができるプラットフォームを整備するとともに、普及に努めるべきである。

(2)デジタル教科書の無償化と完全移行

デジタル教科書の導入によって、生徒一人ひとりが自身の考えや気づきを多様な表現で書き留めて、クラス全体に画面共有することが容易に行えるので、一方向型の授業を双方向型の授業に転換することができる。インターネット機能や動画・音声機能も活用することで、紙の教科書よりも学習の幅が広がり、アクセシビリティも向上する。オンライン授業とも親和性が高いので、新型コロナウイルスの拡大によって登校が不可能になっても、質の高い学校授業を継続することができる。このように多くのメリットを持つが、現在デジタル教科書は紙の教科書の補助と位置づけられて、有償となっている。また、デジタル教科書を使用する授業は、各教科等の授業時数の2分の1に満たないことと定められている現状にある[引用者注。これは撤廃された]。With/Postコロナ時代の学びを実現するために、紙の教科書と同様の予算措置でデジタル教科書を無償化するとともに、授業時数の制限を廃止すべきである。そして、将来的には、紙の教科書からデジタル教科書への完全移行を進め、今まで紙の教科書に充てられた予算をデジタル教科書や教育人材の育成、教育アプリの購入等の予算に配分し直すべきである。

(3)オンライン授業における著作権料の負担軽減

2018年5月に公布された改正著作権法によって、補償金を支払うことを条件にオンライン授業で著作物を教材として使用できる「授業目的公衆送信補償金制度」が制定された。この制度の下、今年度に限って補償金を無償としつつ、デジタル教材の著作物のインターネット送信が認められたが、来年度についても補償金の低廉化及び財政的支援を政府が継続的に手当てすべきである。

3.教育人材面の整備

(1)GIGAスクール構想を支援する人材確保のための予算の拡充

GIGAスクール構想の実現に向けて、民間のICT技術者がICT支援員やGIGAスクールサポーターとして活躍できるよう予算が組まれている。しかし、当該人材確保のための予算が十分ではなく、支払われる報酬単価が低い等の理由から人材が確保できていない現状にあるので、人材確保のための政府予算の拡充を求める。

(2)EdTech企業による教員研修の支援

Postコロナ時代の社会を生き、創造していく生徒を育てるためにも、教員はPostコロナ時代に合った、EdTechを活用した指導法を身に着ける必要がある。スタートアップも含めたEdTech事業者は、プログラミングアプリをはじめとした教育アプリの使い方や、アプリを用いた授業方法などを教員に研修で教えることができるが、研修に充てられる予算が少ないため、実際に学校や教育委員会から委託されるケースは少ない。時代に合った教育を教員が行えるようにするためにも、政府は研修費用の手当てを十分に拡充すべきである。

(3)「教育の情報化に関する手引」の普及と充実(略)

Ⅳ.おわりに(略)

26回 水の中のいきもの「井の頭水生物園」

2021年7月16日(第26回)

水の中のいきもの・「井の頭水生物園」


井の頭公園の 池のとなりの「水の中のいきもの園」に 行ってきました。
いまは、よやくせいです。
 
●スイスイ およいでいるのは ゲンゴロウ。
うしろ足には たくさんの けが はえています。
水を じょうずに かいて およぎます。

ゲンゴロウの どうがも あります。
NHKforschool「ゲンゴロウの足」

https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005400658_00000 

●おしりのさきを 水の上に 出しているのは、
タイコウチ。ストローのような くだで いきをしています。じっと えものが ちかづくのを まっています。
ヤマメとイワナ

たまごハウス
アカハライモリ テナがエビ 
イワナ ヤマメ アユ コイ ブルーギル 
カミツキガメも いました。
外に出たら、「たまごハウス」が ありました。
ダチョウの たまごは おおきいね!
9しゅるいの いきものの どうがを つくりました。
(はじめの2つは、上の動画と同じです)

https://youtu.be/Tm97dHQegEU 1分30

夏休みに 行ってみましょう。