2018-08-28

植物の発芽・成長

【5年 植物の発芽・成長】

ポイント

植物の発芽と成長の2つの内容をまとめてあります。高学年になった初めて観察をする教材なので、ノート指導を、ていねいにやり、よいノートを何度も友だちと交流し、観察記録のやり方を教えたい単元です。教科書の流れに沿いながらも、「植物の発芽ツアー招待旅行」の楽しい工夫もあります。

1.ねらい

(身につけさせたい基礎的知識を中心に)
植物の・発芽・成長するための条件を理解する。
①植物は、水・空気・適温の3つの条件がそろった時に、種子の中の栄養分を使って発芽することがわかる。
②植物の成長には、日光と肥料が関係していることがわかる。

2.教科書を見ると

1次 植物の発芽(7時間)

目標 
植物の発芽について興味・関心をもって追究する活動を通して,植物の発芽について条件を制御して調べる能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,生命を尊重する態度を育て,植物の発芽とその条件についての見方や考え方をもつことができるようにする。
①植物は,種子の中の養分を基にして発芽すること。
②植物の発芽には,水,空気及び温度が関係していること。

(1)発芽の条件 4時間
●発芽と水
・種子が発芽するための条件について話し合う。
・種子が発芽するために水は必要か、予想する。
・発芽に水が必要かどうか調べる。
・条件の整え方を知る。
●発芽と空気・温度
・水以外の発芽の条件を調べる方法を考える。
・種子が発芽するために空気は必要か、予想する。
・種子の発芽に温度は関係しているか、予想する。
・発芽に空気が必要かどうか調べる。
・発芽に温度が関係しているかどうか調べる。
・単元6の準備のために、アサガオの種子をまく。
(2)発芽と養分 3時間
●種子の中の養分
・種子の中に発芽するために必要な養分が含まれているか調べる方法を考える。
・ヨウ素でんぷん反応について知る。
・種子に養分があるか調べる。
●たしかめよう
◎「たしかめよう」、「学んだことを生かそう」を行う。

2次 植物の成長(4時間)

目標  
植物の成長のようすについて興味・関心をもって追究する活動を通して,植物の成長について条件を制御して調べる能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,生命を尊重する態度を育て,植物の成長とその条件についての見方や考え方をもつことができるようにする。
①植物の成長には,日光や肥料などが関係していること。
1植物の成長の条件 4時間
・植物が成長するための条件について話し合う。
・植物の成長に,日光が関係しているか、肥料が関係しているか調べる方法を考える。
・植物の成長に日光が関係するかどうか調べる。
・植物の成長に肥料が関係するかどうか調べる。
・「たしかめよう」,「学んだことを生かそう」を行う。

3.学習指導計画(11時間)

①②発芽の条件 課題①植物が発芽する時に必要な条件を調べよう。(学習課題づくり)
③1回目の観察 課題②発芽する時に、必要な条件は何か観察しよう。
④2回目の観察
⑤種子の観察  課題③インゲン豆の発芽に必要な養分を調べよう
⑥ヨウ素液を使ったでんぷん調べ
⑦発芽から成長へ(植物の成長の条件)
⑧⑨植物の成長の条件の観察(発芽条件と同じように観察し、ノートに記録する)
⑩⑪植物の発芽と成長の条件(まとめ)

4.授業の記録

(1時間目)(2時間目)発芽の条件

課題① 植物が発芽する時に必要な条件を調べよう。(学習課題づくり)

【予想:水、日光、空気、適温、土、光】
・発芽条件を調べる観察のための容器をセット(一つの条件を比べるためには、他の条件を同じにする)
・インゲン豆の観察(根や芽のもとになるもの、子葉)
・大型試験管で水・空気・日光・適温を一度に調べる(別の太い試験管セット)
◆発芽条件  
A 水あり  日光あり 適温  空気あり ◆発芽条件の比較観察
B 水なし  日光あり 適温  空気あり ①水  BとA
C 水あり  日光なし 適温  空気なし ②日光 CとA
D 水あり  日光なし 冷たい 空気あり ③空気 EとA
E 水あり  日光あり 適温  空気あり ④適温 DとC
◆準備 
容器:各班5セット 水につけておいた種子  
観察用の表(5枚) 
大きな試験管セット  脱脂綿
植物が発芽する時に必要な条件を調べよう。(学習課題づくり)
・この板書は、班ごとに条件を考えてカードに書き、黒板に張り出して仲間分けした時の授業のもの。
植物が発芽する時に必要な条件を調べよう。(学習課題づくり)②


(3時間目)1回目の観察

課題②発芽する時に、必要な条件は何か観察しよう。 

・セット毎に観察して調べる。(観察は、2回行う)
・観察の観点を示して記録し、発表する。(根・茎・芽の形・大きさ・色に着目する)
考察:
①発芽に必要なものは水・空気・適温だと分かる。
②日光はなくても発芽する。しかし葉の色が薄く茎は細い。
準備 種子セット
【上:授業前の板書 下:授業後の板書→太い試験管セットも書いた)
発芽する時に、必要な条件は何か観察しよう。

発芽する時に、必要な条件は何か観察しよう。
【子どものノート】
◆発芽の条件は適温、空気、水が必要だとわかった。日光は必要ないが長細く弱々しいかんじがする。Aは茎も太く、色もこい。くきはじょうぶなかんじ

(4時間目)2回目の観察

発芽する時に、必要な条件は何か観察しよう。
【子どものノート】
◇植物の発芽の条件はAは発芽しBは発芽しなかった事から水が必要だと分かった。Dは、日光がなくても発芽したので日光の有無は関係ない。Eは発芽しなかったので適温も発芽に必要。Cは発芽しなかったことから空気は必要だ とわかる。発芽の条件は水・空気・適温。ぎゃくにこの条件が一つでも欠けていたら発芽しない。しかし、日光があ ったほうが元気に育つことがわかった。(ねらいに沿ってわかりやすく書かれている例です)

◇AとBをくらべると水を入れたAは発芽してBはしていなかったから発芽には水が必要。水だけ入れたCは水がくさっていて発芽していなかった。空気は必要。日光はなくても発芽した。でもAと比べて色がうすかった。冷蔵庫に入れたEはカチカチ(種子が)で何の変化もなかった。このように、日光は必要なく、水・空気・適温が必要と分かった。成長には何がいるのかなと思った。(2回目の観察は、発芽から成長への区切りがむずかしく水がくさりはじめていたことで空気の有無についてはほかの条件と混じってしまった。発芽の速さが班によって違うので観察を2回行ったが、観察を1回にするか2回にするかは検討したい。)

◇水は必要です。理由は種子が水分をふくみ、ひからびなくなるからです。かと言って水をあげすぎるのもよくないです。あげすぎると空気をもらえなくなるからです。ぼくは、植物もいきをしているのかなと思います。日光はあててもあてなくても育ちます。あてていると力強そうに色がこくて、くきが太くて、葉が大きかったです。あてないと弱そうに色がうすく、くきがほそかったです。温度は冷たすぎてもあつすぎてもだめです。このことで、水・空気・適温の3つではじめて発芽することがわかりました。(この子どもも、2回目は発芽と成長の条件がまざりあったような中だったのでこのような書

き方をしています。でも、自分のことばで大切なことをしっかり見ていると思います。)

(5時間目)種子の観察

課題③インゲン豆の発芽に必要な養分を調べよう

・発芽のまとめ(大きな試験管セット活用)
・インゲンの種子の観察 → 子葉・根のもと・芽のもと
・養分=でんぷん(植物と動物の違い)
⇒子葉の中のでんぷんを養分として発芽した
・ヨウ素液で、でんぷんの有無を調べる。
・種子の中のでんぷんを顕微鏡で調べる。
・顕微鏡の使い方を丁寧に扱う。
【前日から水につけておいた種子を観察】
前日から水につけておいた種子を観察
(4と5を2時間続きて行った年の板書です。子どもが持参したもののでんぷんも調べました。翌年からでん調べを1時
間とって行うようにしました。)
4と5を2時間続きて行った年の板書です。


(6時間目)ヨウ素液を使ったでんぷん調べ

自宅から持ち寄った食べ物(種子や野菜、加工食品)の中のでんぷんを調べ、植物の様々な種子にでんぷんがあり、イモ類にもあることに気付く。単元の最後の授業で、個別認識を豊かにする。
持ち寄った種子や野菜、加工食品の中のでんぷんを調べる。
【子どもたちが家から持ち寄った食物の数々】
一人が持ってきたもの》
子どもたちが家から持ち寄った食物の数々(一人分)

《班でまとめるとこんなにたくさん》
班でまとめるとこんなにたくさんになります。

【子どものノート】・・・カッコの中は事前の予想
もち(○)→○ 人参(×)→×  
パスタ(×)→○ コーン(○)→○    
大根(×)→× そうめん(×)→○  
ポテチ(○)→○ かんころもち(×)→○ 
キャベツ(×)→× うどん(×)→○ 
やまいも(○)→○ エリンギ(×)→×

(7時間目)発芽から成長へ(植物の成長の条件)

課題④発芽したインゲンが成長して実(種子)をつけるには、どんな条件が関係するか考えて確かめよう。

発芽したインゲンが成長して実(種子)をつけるには、どんな条件が関係するか考えて確かめよう。
⇒日光・肥料
・ウキクサを使って別のやり方で調べる年もあります。
・観察の用意をする(セット)
・準備 
容器、ハイポネックス、バーミキュライト(パーライト)
インゲンの種子、(学年:3個×27班)
・発芽の条件にプラスして何があるだろうと問うと、あるクラスでは、日光、土、肥料、栄養、幼虫、虫の死がい、ミミズなどと出されました。話し合いの中で、「虫の死がいは土になる」「ミミズのふんが栄養分になる」「土がなくてもトマトが育っているのを見た(水耕栽培)」など経験したことや見聞きしたことがたくさん出されます。土の役目は、①植物が根を張ってそれを支えること、②土の中の水を吸い上げてそれを植物が使うのだからこれは発芽の時の水の条件になること、③ミミズのふんが、土の中の栄養分になるからこれは肥料と考える、などと意見がまとまり、最終的などのクラスも、成長の条件は、肥料と日光を調べようとなりました。

(8時間目)(9時間目)植物の成長の条件の観察

課題⑤植物が発芽する時に必要な条件を調べよう。(学習課題づくり)

(このころはメダカの観察と並行して授業) 発芽条件と同じように観察してノートに記録する。考察を書く時は、「ABCの3種類を観察し、「このことから明らかになったことをまとめよう」と話して進めます
発芽条件と同じように観察してノートに記録する。考察を書く時は、「ABCの3種類を観察し、「このことから明らかになったことをまとめよう」と話して進めます。
●成長には肥料と日光が必要だと分かる(インゲンとウキクサの両方の結果から)
観察結果と資料(3種)をもとにして成長に必要な条件をまとめる

【子どものノート】
◇(ABCを書いた後で)発芽には3つの条件が必要ということは知っていたけど、成長には日光・養分がどれだ大切かわかりました。種子の中の養分はすべて発芽で使い切った。根から吸い上げた養分を与えないと弱々しい。成長の条件には、発芽の3条件に+して日光と養分がいることがこの授業で分かりました。

◇このことから、発芽に必要な条件は、水、空気、適温で、成長に必要なのは日光と肥料だとわかった。肥料だけ日光だけでも育つが2つともあるとよく育つ。

◇水と空気と適温の3つの条件がそろうと発芽する。発芽の条件はあたりまえのことだとおもっていたけど、種子の子葉の養分のでんぷんを使い切ったから、成長の条件があることがわかった。養分が○なら日光は◎くらいという説明がわかりやすかった。

◇3つの条件が必要ということは知っていたけど、成長に使われる日光、養分がどれだけ大切かわかりました。しかし、その2つがないだけでなぜそんなに変わってしまうのか知りたいです(先生の赤ペン「6年生になってここは勉強しますよ」)

◇肥料と日光がなくても発芽はしたが、Aとくらべきれいに成長しなかった。インゲンは、つるがないためモールでわりばしにつけないとたおれそうだ。Aはきれいに育ち、Bは弱々しく、Cは小さい。このことから成長には日光と養分が必要ということがわかった。

(10時間目)(11時間目)植物の発芽と成長の条件(まとめ)

●6時間目に行ったでんぷん調べで、班ごとにでんぷんのあったものをまず黒板に書きだします(①~⑧班)
●話し合いで、仲間分けをして、植物の種子・イモ類・根にでんぷんが蓄えられていることを確かめ合います(これが6年理科の「植物の成長と日光・水の関係」での光合成につながります。6年の授業ではこのでんぷん調べの経験が生きます)
●発芽の養分(種子の中にある)、発芽の条件(外的)、成長の養分、成長の条件(外的)の順にまとめます。成長の養分については6年で学ぶことを伝えます

話し合いで、仲間分けをして、植物の種子・イモ類・根にでんぷんが蓄えられていることを確かめ合います

4.教材研究

(1)観察の方法

①発芽の条件について、教科書では、①水→実験・観察、②空気、温度→実験・観察、の順に配列されている。3つの条件についてそれぞれ比較・観察するとともに、浮草を使った観察を行った年度もある。
・ペットボトルでの浮草を使った成長実験・観察 
A(日光あり・肥料あり)⇒数が増える
B(ふたをして日光なし・肥料なし)⇒葉が白くなって数は増えない
D(日光あり、肥料なし)⇒葉の数は少し増えたが色が薄くなった
【3種類を小さなペットボトルでセット】
3つの条件で、小さなペットボトルにセット

【数日後】
結果がはっきり見えます。

②3条件を1本の大きな試験管で一度に調べられる方法も並行して行い、理解を確実にする。
(このやり方は「理科の授業」小佐野正樹著(子どもの未来社)P50の実践に学んで実施)
【1本の太い試験管の中で4種類の条件】



日光

空気


適温




×









×



これを冷蔵庫へ

×

〇と×

〇と×

×

【試験管にセット】
3条件を1本の大きな試験管で一度に調べられる方法①

【4日後】
4日後の変化です。

【1週間後】
3条件を1本の大きな試験管で一度に調べられる方法

【時間差をつけたものを一緒に並べた】
時間差をつけた試験管を一緒に並べた

(2)クイズ形式で予想

発芽の観察で1本の太い試験管を使うやり方を学び、子どもたちが発芽の観察をする際に、やり方を告げずに(遊び心)、「あなたがエンドウ豆(おまめちゃん)だったら、どんなホテルに泊まりたいですか」と聞いて、下記の「案内・招待状」を電子黒板で示し、手を挙げてもらいました。 自分たちで観察しているので、「先生、なんかだまそうとしているな」と、感じた子も・・・。希望者が1~4に挙手してから、この試験管セットを出したら、ワーと歓声があがりました。「やっぱりねー、あやしいと思ったよ」など・・・。

次の2回の理科の時間に班ごとに試験管を見せました。

【理科ちゃん旅行社「植物の発芽ツアー」のご案内】

初夏、リゾート気分を満喫できる4つのコースをご用意いたしました。

あなたは、どのホテルを選びますか?
1.超高層ホテルから眺める景色を楽しむ旅。
見晴らしのいい超高層ホテルから、遠くの山や海を見下してゆっくりと、おくつろぎ下さい。

2.ふつうのホテルですごすふつうの旅
あなたの家と同じ様なふつうのホテルですごす普段着の旅。健康にいい給食スタイルのお食事をたっぷりとお楽しみ下さい。

3.専用プールで泳ぐ常夏の旅
あなただけの専用プールをご用意いたしました。思う存分お楽しみください。泳ぐのが大好きな方に好評なホテルです。

4.高原リゾートホテルに泊まる旅
暑い夏だからこそ、涼しいホテルで快眠・・疲れも吹き飛びます。疲れをいやす旅には最適です。

結果は、・・・
1.超高層ホテルの客→最後にはふつうのホテルのお豆ちゃんが伸びて、試験管の外に放り出されてしまいました。
2.ふつうのホテルの客→快適な旅
3.専用プールつきのホテルの客→起きてこないで,おくさりになりました?!(種子が腐る)
4。高原リゾートホテルの客→(冷蔵庫の中で)すっと眠ったままです。




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