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2023-10-16

デジタル教科書・タブレットと教育実践 国語

デジタル教科書・タブレットと教育実践(国語を中心に考える)

目次

はじめに 
1.デジタル教科書本格導入
2.ICT活用の教育を進める研究団体の動向
3.世界の教科書制度とデジタル教科書
4.「令和の日本型教育」とデジタル教科書・タブレット
5.国語での(文科省HP)ICTを活用した授業例
6.デジタル教科書導入の時代の国語
おわりに 学び合いたい書籍のご案内

はじめに

わたしの小学校時代の卒業文集に、ある友だちはこう書いていました。
「一年生の時、初めて書いた作文はこうでした。『〇ちゃんたちとあそびました。おもしろかった』。これだけしか書けなかった私がこんなにかわるものかと思うとふしぎでたまらない。でもうれしい気がする。」
その級友たちと卒業して四七年目に、クラス会で再開し、その場でしみじみとこう語った友だちがいました。
「おれは、仕事も何もかも失った時に、先生が『本を読め、本を読め』ってずっと言ってたことを思い出して本に没頭した。そして自暴自棄にならずに立ち直れたんだ」。
担任の先生は、本の読み聞かせ・話し合いで読み深める国語の授業・作文に力を入れ、「自分の頭で考えて判断できる人になれ」と、いつも語ってくれていました。
半世紀を経て小学校教育の効果が確かめられた一コマでした。

1.デジタル教科書本格導入

今年の8月25日、文科省「第5回教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ」が開かれ、次の様な論点整理が出されました。
【論点整理】より
●デジタル教科書を本格的に導入する最初の契機として、教科・学年を絞って令和6年度から段階的に導入すべきではないか。
[小学校5年生から中学校3年生を対象に「英語」を導入し、その次に現場ニーズの高い「算数・数学」を導入する方向]
●紙の教科書とデジタル教科書は、ハイブリッドに活用していくべき。

デジタル教科書が、政府の方針として本格的に学校に導入される中で、今までICT教育情報で配信してきた情報を整理してみました。今回は月刊「国語の授業」誌に寄稿したものに加筆し、主に国語と理科を実例にとり上げ、今求められる課題を考えてみます。

2.ICT活用教育を進める研究団体の動向(2022年12月現在)

タブレットが学校に一斉に導入され、行政主導で活用が強力に進められています。「どう活用したらいいのか?」という個々の教員の思いに応えるように、ネット上のフェイスブックで多くの団体が急速に影響力を広げています。その中心は、巨大IT企業主導のソフト活用です。その一端を紹介します。

◆ロイロイロノート研究グループ 6,428人 
投稿される著書の例:「ロイロノートのICT"超かんたん“スキル」「わくわくパフォーマンス課題づくり」。参加者が質問すると回答が寄せられ、ロイロノートの具体的な活用法が分かるのが特徴。

◆Microsoft Education 研究会 2,601人  
紹介される研究会テーマ例:「学校の未来図」
ソフト活用投稿が多い。「マイクロソフト認定教育イノベーターの提供する授業・素材活用ポータル」

◆ミライシード研究グループ 3,197人 
ミライシードの使い方や授業実践を共有・相談する。投稿者の質問に多数のコメントが寄せられています。セミナーも頻繁に行われています。

◆みんなのデジタル教科書教育研究会 2,407人  
「協働学習による児童のICT活用と創造力・発信力向上の授業実践」「情報デザイン・データの活用分野」の教材開発と授業実践」の紹介など。

その他にも、
◆ICTで国語授業を変える教育者グループ 847人
◆プログラミング教育 9,028人 
◆教育ICT活用研究会 2,540人
◆ICT教具論からの脱却 4,727人
◆日本教育情報学会ICT活用研究会 1,701人

上記10団体だけでも、登録者数は今年の7月時点で42,824人、11月末には46,476人。4か月で約3,600人増えています。FBへの投稿内容は、オンラインでのセミナー・研究会案内・実践報告・出版物の案内・実践上の相談と回答等。翌2月初旬には48,722人、7か月で5,800人増。

3.世界の教科書制度とデジタル教科書

資料1

紙とデジタルの出版規模比較






紙の教科書とデジタル教科書を比べる際、その背景としてデジタル出版物の急速な伸びの動向を見てみましょう。(全国出版協会・出版科学研究所調査)

2020年度は、紙の出版物が前年度比マイナス1%に対して、電子出版物はプラス28%の伸びでした。今は会社ではデジタル資料で仕事をしている時代、大学生百人に「紙の新聞を読むか」と聞いたら「読んでいるのは五人」という報道もありました。

仕事や生活情報をデジタルで受け取る時代の中で子どもたちは生きています。こうした現状をふまえて考える必要があります。

公益財団法人教科書研究センターが42か国1地域を対象に「海外教科書制度調査研究報告書」を刊行しました。
教科書制度とデジタル教科書の世界の動向の報告です。これをみると、「デジタル教科書は世界のすう勢」だと分かります。
しかし、その前提として、教科書を誰が選ぶのか(選定)、教科書検定制度とカリキュラム(日本では学習指導要領)の在り方を見ると、日本が極めて特殊な教育環境だと改めて気がつきました。

デジタル化が進んでいるヨーロッパ諸国では、

①教科書は自由発行、採択は学校や教師がすう勢
②効果的なツールとしてデジタル教科書の使用が広がる 
これに対して日本では、
① 文科省の厳しい教科書検定、採択は教育委員会(教員が採択権から排除)
② そのもとでの小中学生に「一人一台」のタブレット貸与
自由と創造性が尊重される海外の動きの中で、管理と統制の日本の特殊な教育環境がよくわかりました。(世界の流れに逆行)

教育の基準とされるカリキュラムについては、

◇欧米諸国では、教員の裁量(専門性の尊重)が保障されています。
◇日本では、文科省の学習指導要領で教育内容・方法に厳しいしばりがあります。
「過度に競争的な日本の教育体制」(国連子どもの権利委員会の勧告)のままでは、デジタル教科書のもつ可能性や創造的な活用も阻害される懸念があります。
また、その効果的な活用が可能な少人数学級も立ち遅れています。学校現場からの子どもの実態と実践にもとづく発信、保護者・市民の運動で、デジタル時代の教育状況を変えていくチャンスだととらえたいと思います。
文科省は「各教科等の指導におけるICT 活用の基本的な考え方」の中で、「教材・教具や学習ツールの一つとしてICTを積極的に活用」と説明しています。
しかし、その前段には、「新学習指導要領に基づき、資質・能力の三つの柱をバランスよく育成するため」と活用範囲が狭められています。
デジタル教科書とタブレット活用については、その目的が何かが問われています。 冒頭、私の小学校時代の国語の思い出を書いたのは、「自分の頭で考えて判断できる人」を育てる教育の本質をこの問題を考える土台にしたいと考えたからです。
それは、日本国憲法の規定と重なります。
憲法26条「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」
つまり、どの子も持っている発達可能性を伸ばすために、普遍的で共通の教育=普通教育を受ける権利を保障するということです。47教育基本法の「人格の完成をめざす教育」と合わせてこの問題を考える視点にしたいと思います。

ヨーロッパ諸国と日本を比べてみると

(ヨーロッパはほぼ同じ傾向)
◆次の3つの視点で比べてみると、
①教科書の基準・検定・認定・自由発行等、②教科書採択・選定、③デジタル教科書

英国(イングランド) 
【教科書】 教科書は自由発行で、民間会社によって発行されている。
【採択・選定】 授業を担当する教師が、校長や教科の責任者との相談の上で、どの教科書を使用するかを決定する
【デジタル教科書】 各教室に電子黒板が普及していることから電子黒板を使った授業が一般的。電子黒板に映せるようにデジタル版を用意しいている場合が多い。関連の練習問題や映像教材なども用意されている。

フィンランド
【教科書】 教科書を用いて授業を行うことが一般的であるが、使用義務はなくい。教科書同様、広く使用されている教材にワークブックがある。
【採択・選定】 採択に関わる制度も特に設けられていない。自治体、学校、教員単位のいずれかで選定されている。学校単位の選定が最も一般的。
【デジタル教科書】 教科書及びワークブックは、紙版とデジタル版双方で刊行されている。近年、教育におけるICT活用に積極的に取り組んでいる。一方で、デジタル教科書やデジタル教材に特化した政策は、特に取り組まれていない。

フランス
【教科書】 教科書の編集は公権力から独立した私的なものとしてとらえられている。検定制度はなく、出版社は自由に発行することができる。
【採択・選定】 学習指導要領に定める内容は教えなければならないが、教材の選択は教員の自由である。教科書は、学校ごとに選択される。
【デジタル教科書】 各人が自分のパソコンからインターネットにアクセスし、自分の仕事に必要な資料やリソースを使える環境であり、教職員間のやりとりもできる。こうしたデジタル環境の一環にデジタル教科書も位置付けられている。

日本
【教科書】 学校教育法に教科書の使用義務が定められている。教科書は、検定に合格することで教科書として認知される。
【採択・選定】 市町村立の小・中学校の教科書採択の権限は市町村の教育委員会にある。
【デジタル教科書】 2020年、小中学生に「一人1台」のタブレット端末が貸与された。

2023年の小学校の教科書検定時から本格的にデジタル教科書が登場する。

4.「令和の日本型教育」とデジタル教科書・タブレット

コロナ禍で、タブレット一人一台が前倒しで貸与されたので、学校現場では「タブレットをどう活用するか」が大きな課題になっています。タブレットはデジタル教科書を使う道具です。
昨年の6月に、「2024年度の小学校用教科書の改訂時期をデジタル教科書本格的に導入する最初の契機」とするように文科省の検討会議が一次報告を出しました。全国の教室でデジタル教科書をタブレットで使う授業が一斉に始まります。

導入に至る経過をみると、政府のねらいが見えてきます。
2020年3月、経団連が、「Society 5.0時代の人材育成に向けた義務教育の抜本的ICT化を求める緊急提言」を出しました。
財界が政府に求めたのは、
【必要とされる人材】 
定型業務の多くはAIやロボットで代替可能になるので、デジタル技術やデータを活用して課題を解決できる人材
【人材を育成するための学習】
プログラミング的思考の習得・教科教育の効率化・探究型学習の充実・個別最適化された学習の実現、最低限のITスキル、情報選択力

財界に「必要とされる人材」を育むための「望ましい手段」として授業の姿を示し、政府に実現を迫っています。
これを受けて、GIGAスクール構想は、経済産業省主導ですすめられてきました。

2020年5月には、民間のGIGA スクール構想推進委員会が設立され、行政の構想の支援活動をしています。会員の中心は、世界的な情報産業のGAFA M(ガーファム)です。グーグル、アマゾン、アップル、マイクロソフト等が名を連ねています。

文科省のホームページをみると、これらの情報産業の大企業が登場しています。ICT教育の活用事例集は、文科省から各企業のHPにリンクして、そこに授業の活用事例がたくさん出てきます。校内研修の講師用資料まで企業が提供しています。
この動きは、地教委段階でも具体化されています。Google for Education には各種認定制度があります。(「認定教育者レベル 1と2」レベル2に合格すると履歴書などでスキルをアピールできる)
昨年の夏季休業中に各校のICT担当者対象の研修(研修の最後に認定テスト)をGoogleの講師を招いて2日間、長時間の研修を実施した市教委もあります。

2021年3月、中央教育審議会は、これからの教育は、「新学習指導要領の着実な実施」と「ICTの活用」で、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を行うように答申しました。
次の資料は、「協働的な学び」(文科省HP)のポイントになる部分です。
「個別最適な学び」とは、教師が子どもの「特性・学習進度・学習到達度に応じて、異なる方法で学習を進め」、「異なる目標に向けて、学習を深め、広げる」ことです。
資料2





















「協働的な学び」とは、「異なる考え方が組み合わさり、よりよい学びを生み出す」と書かれています。
わたしが学んできた児童言語研究会で大切にしてきた国語の授業では、内言と外言の活動を高める活動が多様に展開されます。
文学作品や説明文の授業の中では、わかったことなどを行間に書き込む学習活動が土台です。それをもとにして自分で考えたことを発表して、話し合い活動で共に考え、協同の学習をすすめ、作品を分析・総合しながら読みを深めてきました。
個別学習と集団学習の二本立てで、一見すると同じような言葉も出てきます。
しかし、中教審答申の中には、すべての子どもを大切にする姿勢、学び合う楽しい学習の姿は見えてきません。それは、経団連が求める「人材育成」のために、各自が個人として「社会的変化を乗り越え」「社会の創り手」になることをねらいとしているからではないでしょうか。ICTを活用した先進例・例示として示されている授業の具体例をみていくと様々なことに気が付きます。

5.国語での(文科省HP)ICTを活用した授業例

文科省HPで紹介されているICTを活用した授業例では、
① 単元・題材の目標
②単元の流れ
③活用した機器・コンテンツ
④導入・展開・まとめの三段階のポイント
この四項目に分けて書かれています。
この中で④は、次の様になっています。

〇小学校3年 単元「三年とうげ」(物語文)(原文ママ)
〔導入〕
教科書を見ながら電子黒板の教師用デジタル教科書の朗読を聞き、その後、全員で教科書を音読する。
〔展開〕
4人グループで同時に書き込みが出来るよう、ひとつの電子模造紙を4分割して各グループに配布する。グループごとに、それぞれ電子模造紙に「三年とうげ」を読んだ感想を書き込む。
〔まとめ〕
タブレットPCを見ながら自分の書いた「三年とうげ」の感想を発表する。教員は児童が発表した感想を板書してまとめる。教員はタブレットPC(教員機)で児童の感想を見ながら、児童の発言に対して問いかけたり、確認したりして学習を深められるように支援する。

〇小学校5年 単元「短歌と俳句を味わおう」
〔導入〕
児童は俳句を読んで伝わってきたこと、作者が伝えたかったことを想像して(電子模造紙に)コメントを記入する。その際、「音」「季語」「切れ字」に注目する。コメントは随時更新されていくので、他者のコメントを読むことができ、人によって感じ方が違うことが分かる。その後で解説を読み、作者が伝えたかったこと、言葉の意味などを知る。
〔展開〕
自分のページを開き、自分のつくった俳句を書き込む。その上に白紙の付箋誌紙を貼り、他の人から見えないようにする。俳号(ペンネーム)で書くことで、個人への先入観をなくすことができる。
〔まとめ〕
電子模造紙上で友達が書いた俳句を読み、伝わってきたこと、作者が伝えたかったことを想像してコメントを記入する。複数のコメントが集まった時点で解説に貼った付箋紙を外し、作者が伝えたかったことと、読んだ人が感じたことの違いを楽しむ。
ICTを活用して、デジタル教科書の朗読を聞いたり、電子模造紙に感想やコメントを書き込んだりすることが、「子供一人一人の特性に応じ」た「個別最適な学び」とされています。
そして、「タブレットPCを見ながらの感想を発表」すること、友だちのコメントなどを読んで、「読んだ人が感じたことの違いを楽しむ」ことが、「協働的な学び」の例示です。

これらが「異なる考え方が組み合わさり、よりよい学びを生み出す」国語の授業として紹介されている内容です。

6.デジタル教科書導入の時代の国語

国語では、話し合いで読み深め、学び合う中で認識を発展させることが大切だと思います。
文科省例示の授業にないものは何か?問題点・課題を検討する際、「一読総合法読みの授業と理論」の中で三輪民子さんが紹介している1966年当時の次の一文が参考になると思います。
「一読総合法では、まず、ひとりひとりの全力発揮の自由読みが行われる。ひとそれぞれに頭の中に豊かな反応が生まれる。それをみんなの前で出し合い、ぶつけあい、補いあい、正しあい、読み方を学んでいくわけである。その機会が話し合いである。」

東京のある小学校の一年間の教科備品の総予算はわずか30万円でした。
一方、タブレットや校内Wi-Fi環境の整備等で2500万円以上の税金が投入されました。なんと学校の教科備品費の80年分以上にもなります。
全国の小中学校にこれだけの国費が投入されたのですから文科省の強力な「指導」が始まっています。
こうした状況ですからデジタル教科書・タブレットというツールに対応しなければ、自主的教育研究活動の成果は一気に日本の教育現場から押し流されてしまうと思います。
当面、紙の教科書とデジタル教科書の併存の時期がすぐ先にやってきます。

デジタル教科書はデジタル教材とセットで導入されます。わたしが一番危惧していることは、多忙な教育現場の実態では、教師の教材そのものの研究抜きに、デジタル教科書とデジタル教材だけで教育が完結し、教育の自主性・自由・創造性が失われていくことです。

それを、東京教研での中学校社会科のS先生の「地理・アメリカ合衆国の農業」レポートを読んで実感しました。レポートでは、
①教科書では、アメリカの農業の特徴は、「広大な土地を利用して、大型機械を使い、高い生産性をあげています」と書かれている。
②今のQRコードつきの紙の教科書でも、そこをクリックすると動画で『わかる』ようになっている。
① しかし、実際には1000エーカー以上の大規模農家数は、アメリカ全体の8%である。
④そこでアメリカ農業をささえてきた農家の実態や様々な課題の資料を提示し、生徒の討論を通して深く学習した。
➄デジタル教科書と「便利な」デジタル教材がセットで登場すると、教師の教材研究が無くても「そこそこの」授業はできてしまう。

しかし、本当の学習・深い学びには、教師の自主的教材研究が不可欠。画一的・国家統制の授業にならないように教材研究がますます大切になります。

自主的研究活動の中で評価されてきた価値ある教材(まずは文学作品・説明文)と授業記録をもとに、新たなツールを活用した授業方法の創造が求められていると思います。
そのためには、ベテランと日常的にタブレットを活用している若い方との協同が不可欠だと思います。(学習指導要領から出発するのではなく子どもの実態に即して)。
ICTの活用にあたっては、文科省の手引きにある10項目の「学習場面」(注)に対応して、どの場面で使ったらいいか、使わない方がいいかも検討してはどうでしょうか。
(注)
【一斉学習】①教材の提示 ②思考を深める学習 
【個別学習】③個に応じた学習 ④調査活動 ➄表現・制作 ⑥家庭学習
【協同学習】⑦発表や話し合い ⑧協働での意見整理
      ⑨協働制作 ⑩学校の壁を越えた学習
ICTの活用は、新たな教育機器として、国語では本文への様々な書き込み機能の活用など工夫が行われています。
話し合い活動の中では、
・電子黒板(プロジェクター)で本文の立ち止まり箇所を拡大して、全員での話し合いに生かす。
・デジタル教科書の全文掲示機能を併用して,子どもの意見等が教科書のどの文に着目したのか確認する 等

わたしは、タブレット活用について、実践・疑問などを率直に交流する教育研究会(Zoom併用)にも数多く参加してきました。
その中で、「学校公開ではタブレットを使った授業を組み入れるように」「(人事考課の)管理職による授業観察ではタブレットをつかうこと」、「校内研究や市の教育研究会での研究授業ではタブレットをつかうこと」などの「タブレットありき」の事態も報告されています。 だからこそ、デジタル教科書・タブレットの活用で可能性を広げる新たな学習方法の研究は、自主的な教材研究と一体ですすめる機会を多く持つことが特に大切だと思います。

おわりに 学び合いたい書籍のご案内

(1)理科の授業についての特集号

●月刊「理科教室」2022年7月号

特集「ICTを自然科学教育に生かすとは」7本の論文があります。
・ICTをツールとして使う
・ICT時代の新しい授業づくりの運動を
・堪能でない教師のICT活用~ロイロノートを使って
・GOGA端末を使ってもっと「便利」に、「対話」を促す「深い学び」を
・ICTを授業に活かす センサーとデータロガーを使う理科実験
・表計算ソフトによるシュミレーションを取り入れた授業
・GPSアプリを用いた地球の大きさの測定実習 この7本の記事から学べることは、今まで積み上げてきた自主的な教育研究活動の成果を土台に、授業の中でICTをどう生かすかという視点で具体的な取り組みだということです。

(2)滝川洋二さんの「ICT時代の新しい授業づくりの運動を」

滝川さんの現状のとらえ方の次の記述に共感します。
(人一台端末で利用が進んでいる中で)
一方で先生は、世界で最も厳しい多忙が続き、しかたなく手っ取り早い教材ですまさざるを得ない状況です。その中で心配されるのが、今までの様々な教育研究の成果が、ネット上で見ることが出来ない、あっても見つかりにくく、現場の先生から存在さえも見えない、科教協運動そのものも受け継がれにくい状況いなっていることです。こういう時期に、適切に対応できなければ科教協の財産も運動も、次世代に受け継がれない可能性があります。そこで、ICTをどう使うか、IUTの時代にどんな動きが必要かを考えます。
これは、理科教育だけでなくどの教科の教育研究団体にも言えることではないでしょうか。

そして滝川さんは、今までの授業研究の財産を4つの視点でまとめています。
視点①教材整理の原則-系統性と順次制
視点②授業の記録をとる運動の呼びかけ
視点③サークルをつくろう
視点④子どもの認識を変える実験開発
さらに、
◆教科書にあるからではなく、何を教えるか」の研究
◆ICT時代の新しい授業研究づくりの運動
(若手とベテランの協力)
などを提案されています。是非ご一読を。

(3)「GIGAスクール構想」光と影、教育の展望

(大阪教育文化センター編)

GIGAスクール構想について、詳しく分析しています。
1章 危険なデジタル庁創設と一体の「GIGAスクール構想」
2章 経団連「教育提言」の危険なねらいと本質
3章 教育のICT化と教育効果(新自由主義と一体では、教育効果はない)
4章 「『令和の日本型学校教育』(中教審答申)の構築の問題点と活用点

本質的な批判検討の上にたって、4章では中教審答申の矛盾をついて、答申文の活用も含めて、教育を守る取り組みについて詳述しています。
活用できる中教審答申文
「ICTをこれまでの実践と最適に組み合わせて有効に活用する、という姿勢で臨むべき」
「空間や時間を共有することで得られるものが失われる危険もあるため、その活用方法については、教師と児童生徒との具体的関係の中でしっかりと見極めることが大切」
・・・その他(本文をご覧ください)

そして、5章と6章で、国連子どもの権利委員会の指針を生かしてこれからの取り組みについて書かれています。

(4)五感を使って学び合う教育を大切に

「青少年のための科学の祭典 30周年を振り返って」と題して、全国大会実行委員長の片江安巳年先生が、JSFTODAYでこう書かれています。
(一部抜粋)
・・・現代では、情報はスマートフォンやパソコンなどを通じて直ちに得られ、また遠く離れた人との情報の遣り取りも容易になりました。驚異の自然現象や未知の理論を瞬時に調べられる時代に生きる今の子供たちには、道具を使って遊ぶ機会も減り、自然や生き物に直に接する機会もほとんど失われています。バーチャル・リアリティー的映像を用いる遊びの中では、観察眼や試行錯誤による科学的検証などは育ちません。自然科学への興味関心は、試行錯誤の過程で必然的に要求される科学的検証の体験や、自然や生き物に接する中で五感を使って体験する中から生まれるものです。・・・

わたしは、LINE公式アカウントを使って、「しぜんと科学のおたより」を毎週170家庭(幼児~中学年)に毎週配信しています。
毎回テーマを決めて写真や自作のショート動画を交えて送信しています。
先日は、小学生が3人グループでレゴでロボットをつくりプログラミングで動かす「宇宙エレベーター」講座を取材しました。
その時、若い講師の先生に「子どもたちが、こんなに宇宙エレベーターに夢中になるのはなぜですか?」と、お聞きしたら、
「ロボットをつくっても、思った通り動かない。そこで試行錯誤して、自分たちで考えて、あきらめず、ロボットと向き合ったりプログラムと向き合ったりして、がんばってやるところが面白いのかなと思います。」
と、話してくださいました。
ICT時代、デジタル教科書の時代の教育は、五感をフルに動かす教育の大切さを見失わないですすめていくことが大切だと思います。

「コマコマアニメソフト」でのアニメ制作 小学校高学年図工


小学校 図工 高学年 
「コマコマアニメソフト」を使ってアニメーション制作

配布されたタブレットに入っている「コマコマアニメソフト」を使って実践された先生にお聞きしました。

〇発想力・構想力(アイデア)を育てるねらいをもって、動きのなめらかなコマ送りになるようなアニメ制作にとりくまれました。

指導の順序は、
① テーマ「〇(マル)から始まり、〇(マル)で終わるアニメーション」をつくろうと呼びかける。

② アニメーション作りの説明をする(ソフトと例示した紙に書いたものを使って)資料A


・〇(マル)から始まり、〇(マル)で終わるアニメとは何か、魚の絵コンテの例示を示して説明する。
・絵コンテは、10枚ぐらいで2分~3分になる(スピードは調整できる)
・出来たら、班でつなげて、4つのお話で1本のアニメにする

③ アニメのシナリオ(絵コンテ)を各自で書く・・・資料B


④ 1コマずつの絵を、A4判半分サイズの紙に鉛筆で下書きして、先生にOKもらったら、ネームペンでなぞっていく。色は色鉛筆で薄く塗ってもよい。
(コツ)なだらかなアニメーションにするには、コマの枚数を多くして少しずつ画が動いていくようにするとよい。

➄1枚ずつ「コマコマアプリ」を使って、タブレットで撮影していく。
(コツ)紙を置く位置をきっちり固定する。撮影のたびに紙の位置がずれると画面がブルブルになる。

⑥ 班員全員分を立て続けに撮影し、つなげて1本のアニメの作品とする。学級での上映会の時は「アニメ会社名・アニメーター紹介」をして鑑賞会とする。

⑦すべての班のアニメデータを教員タブレットに集めて、クラス全員分の短編アニメとする。これを保護会で紹介する。

子どもの作品例

◆〇 ⇒ 野球のボールの〇 ⇒ ボールが回転 ⇒ 野球ボールの網目が入る ⇒ 試合でストライクゾーンに入る⇒ そのボールをアップして〇に戻る

◆〇 ⇒ サッカーボール ⇒ シュートしてゴールへ ⇒ キーパーが横っ飛びしてキャッチする ⇒ キーパーの顔がアップしてその汗が小さな〇 ⇒ キーパーの流した汗がアップされ ⇒ 〇に戻る

◆〇 ⇒ お月見だんごお月様のウサギの話   

◆〇 ⇒ ダンゴムシの旅のお話


教科指導でのタブレット活用 小学1年・2年

教科指導にタブレット活用を取り入れた実践

配布されたタブレットは、子どもたちが毎日家庭から充電して持参しくくる自治体の2年生の担任の先生にお聞きしました。
この学校では、管理職からタブレットの使用について特に指示はなく、学年の先生方で相談しながら、教科指導の中で効果的に取り入れられるところを考えて実践されているということです。 
校内研究での研究授業でタブレットを活用した授業を見た後は、それをヒントに自分たちに学年でどう取り入れられるかも話しているということです。

国語と生活科の合科的指導の中で 

校庭で育てている野菜の観察をします。どんなところを見るか(=観察の観点)を勉強します。
進め方
1.国語の事前の授業の中で、色・形・大きさ・場所による違いなど観察の視点を学習した後に、先生が、「今日は植木鉢の野菜」と言うように、校庭で見てくるものをクラスルームの写真で提示します。

2.子どもたちは、校庭に出て、それを観察して、絵を描く代わりに、タブレットを使って写真を撮ってきます。一人5枚ぐらいなどと枚数を大まかに決めておきます。

3.教室に戻ってきて、写真をみながら、自分で観察してきたことを思い出しながら、観察カードに絵を描きます。その際、タブレットで自分が撮った写真を拡大してみることも出来るので便利だということです。また、上の方はトマトの実が緑色だけど、下の方がうすいオレンジ色のように赤くなっていることが確かめられます。
暑い今の時期は、大勢で校庭での観察しながら観察カードを描くことは集中できないが、涼しい教室でタブレットの写真を見ながら、思い出して書く方が集中できるということです。友だちの写真も共有できるので、写真を引き伸ばしてみて気が付くことがあるということです。

4.育てている3種類の野菜の育ち方を生活科の時間にまとめます。

〇担任は、「観察するっていることのやり方が変わってきた」と感じていると言います。
自分の目で実際に観察することを写真に変えるということではなく、実際の観察とその後の確かめをタブレット活用で出来る良さがあったと話されました。

(1年の学年末の取り組みを振り返って)

プログラミングの導入の実践

教科書にあるQRコードからプログラミング導入のゲーム的な教材に行きつきます。
スタート地点からゴール地点まで、家事を避けながら人形を動していく教材です。
「右に3つ進む」「〇こ分進む」などとプログラミングして、絵地図にある火事を避けながらゴールに向かう道を打ち込みます。その後、実際に人形を動かしてみます。子どもたちは、ゲーマなどで慣れているので、 こうした取り組みはスムースにどんどん進めます。

1年生の図工 『すきまちゃんの すきな すきま』

教科書 日本文教出版発行の「令和2年度版 ずがこうさく1・2上」
小さな「すきまちゃん」 を作って、それを学校内の隙間に隠して見つけるというものです。小さな人形を作ることを楽しみ、校内に「すきまちゃん」を通してさまざまな隙間の形があることに気付くというのがポイントだそうです。進め方は、
① 小さな「すきまちゃん人形」をつくる。
② 材料は、ダンボールと隙間テープとモールなどです。
③ 自分の作った人形を校内で、隙間を見つけてそこに置いて、タブレットで写真をとっ
てくる。5か所撮ってくる。
④ 友だちの人形と写真を共有して見せあう
すきまちゃん
















国語 音読教材

単元のはじめに、自分で教材を音読して、友だちに録音してもらう。自分の声を聴く機会
はないので、この自分の声を聞いて、どこでつまずいているのか等気づかせる。

学校全体の読書指導

学校内の先生方がすすめる本のリストをつくり、「卒業までに〇〇冊読もう」という取り組みを全校で進めています。印刷したブックリストから、タブレットにリストを入れるやり方にしました。
リストの中で自分が読んだ本に印をつけます。リストは低学年・中学年・高学年の順になっています。学年が上がっても自分のリストを取りだして6年間仕えるようにしました。紙のリストだと長期間使うとボロボロになって劣化してしまいますが、それと比べてこのやり方の方がよかったと言われました。

体育の記録(スポーツテスト)

スポーツテストの記録はあゆみのファイルにいれてあるので、体力調査の前に写真を撮って、学校で見られるようにすると、去年と比べて「自分の記録がこれだけ伸びた」など、成長の記録が確かめられると話されました。

テキストマイニングで「ふわふわことば」「学級目標づくり」

(テキストマイニングとは、テキストデータから必要な情報を抽出することの総称です)
〇「ふわふわことば」
(ふわふわ言葉とは「ありがとう。」「すごいね!」など、言われたら嬉しくなる言葉のこと)
「ふわふわことば」を考えよう・使って見よう⇒多かったことばは「いっしょにあそぼう」でした。
〇学級目標づくりに活用⇒各自が書き込み、それを学級で確かめると多くの友だちの意見が大きな文字でうかびあがってきます。

さいごに
最後に担任からの一言・・・・・
●「eライブラリという学習アプリが入っていてお金も払っているので、授業中でも宿題でも使っています。私は宿題によく使いますが期限を設定すると宿題をしていない子に対しての対応が出来なくなるので難しいです。授業中は自習の時間や最後の10分位にしている先生もいます。

算数のツールで時計があります。模型の時計はすぐに短針と長針がずれますが、タブレットの物はとても使いやすいです。算数ブロックなども使いやすいそうです。(私はブロックは実際の物を使いますが)」

デジタル教科書の効果と弊害の検証

デジタル教科書の効果と弊害の検証

1.デジタル教科書への懸念の広がり、効果と弊害の検証を深める必要性

2022年4月24日の読売新聞の社説、2022年5月29日の朝日新聞の社説余滴が相次いで、文科省が2024年から本格導入をめざすデジタル教科書について懸念を表明しました。

読売新聞は810万部、朝日新聞は558万部、日本の新聞の1位2位が社説で主張している内容は学校の実体と声を反映し、学習効果への懸念と、効果と弊害の検証を深めることを求めています。社説のそのポイントをみてみましょう。

2.読売と朝日の社説が指摘している懸念

読売新聞の社説では、

◆デジタル教科書について、読売新聞が公立小中学校500校を対象にアンケートを実施したところ、全面移行に懸念を抱く学校が全体の9割近く。「紙の教科書をメイン、デジタルを補助的にすべきだ」という回答が52%に上り、その逆は14%にとどまった。

◆国が子どもたちに端末を配ったのは、消費増税後の経済対策の側面もあった。使い方は本来、教育にどの程度有効なのかという観点で論じられるべきだが、その検証が不十分なままデジタル教科書への移行を進めるのは問題だ。

◆デジタルは紙に比べて記憶に定着しにくいという研究結果が脳科学者から相次ぎ発表されている。経済協力開発機構(OECD)の分析でも、コンピューターの使用頻度が高い学校ほど読解力の成績が低いという結果が出ている。

この1か月後の朝日新聞の社説余滴では、

◆経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査では、デジタルより紙に親しむ生徒の方が読解力が高かった。紙の方が、記憶や読解の効果が高いとする研究も複数ある。

◆本格導入を求めた有識者会議の中間提言に対するパブリックコメント(意見募集)には310件の意見があったが、(意見全部を入手した結果)賛否問わず熱心な注文や指摘が書き込まれていた。学習効果に否定的な研究を示した意見、公表資料にはない「メリットばかりが強調」「課題の検証を後回し」との表現も目に付いた。子どもに影響が大きい政策。効果と弊害の検証を深めてからでは遅いのか。(読売新聞は)意見を異にすることが多い新聞だが、本件については、同感してしまう。

3.効果と弊害の検証 文科省内の資料

両紙の社説でデジタル教科書の学習効果への懸念の研究結果がいくつも出ていると書かれています。

今年の文科省内の会議で配布された資料にもそれが反映されています。資料をご覧ください。
文部科学省 「教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ(第2回)」令和4年4月25日 
「デジタル時代の読解」4.25.2022 @文部科学省 2022
 ペンシルバニア大学 バトラー後藤裕子 資料A

この研究者の資料では、デジタル世代(2000年以降に生まれた子どもたち、若者のデジタル使用の実態を示したうえで、子どもの読解力の変化を指摘しています。

伝統的な読解

• 文字情報を解読し、単語を認知する(decoding)
• 文字情報から意味を構築する

デジタル時代の読解

• 伝統的な読解に加え、動画などマルチモダル(聴覚・視覚情報)の情報を総合した多様な形式の情報を、文字情報と組み合わせながら処理する

21世紀求められる読解力とは何かを論じています。その上で、紙媒体デジタル教材の効果について実証的な研究結果を紹介しています。
ここに注目してみると、次にように書かれています。

資料Aの①










































ああ






2023-01-24

今に生きる「『デジタル教科書』推進に際してのチェックリスト」

今に生きる「『デジタル教科書』推進に際してのチェックリスト」

8つの学会が懸念していること、教育の本質から大切なこと

北多摩東教育センター運営委員 中山和人

昨年度、「タブレット1人1台」が導入された中で、各地での先生方との学習会を重ねてきました。共通して学校現場から出された意見は、ツールとしてのよさと同時に、今まで大切にしてきた教育活動のよさが薄められるのではないかという懸念でした。
今から10年以上前に出されたこの「提案と要望」は、こうした学校現場からの懸念をまとめ、それに対置して大切にしたい本質的な教育活動とは何かを示す大切な提言だと思います。
この「提案と要望」のポイントを、「◆懸念・配慮すべき事項」と「◇大切な教育活動」の2つの視点で見てみましょう。

事項1
◆懸念・配慮すべき事項:理科では、教材を視聴・操作することで実験を代替し、実験の時間を「節約」しないこと。
◇大切な教育活動:理科では、実際に実験などを行い、自然現象を観察することが、本質的に重要。

事項2
◆懸念・配慮すべき事項:虚構の映像を視聴させることのみで、科学的事項の学習とすることが無いこと。どんな現象でも自由にしかも直接に観測や実験可能だという誤った直観を醸成する危険性
◇大切な教育活動:自然の解明は、観測・計測困難なものを観測・計測できるようにするための技術や、観測・計測できたごく限られたデータを元に、モデルを構築して理解する活動によって支えられている。そのような困難や達成感を生徒が身を持って体験する活動。

事項3
◆懸念・配慮すべき事項:紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動の縮減がないように。
◇大切な教育活動:初等中等教育段階では、紙と筆記用具のような柔軟性や操作性に優るものはない。①ノートの取り方、直接動かすことができる教具や図を用いて考える方法、②観察や実験の結果を写真ではなく図や言葉で記録する方法、③・表やグラフにまとめる方法、筆算等の計算の書き方、証明の書き方

事項4
◆懸念・配慮すべき事項:学習の「効率化」が、生徒が手と頭を働かせて学習内容の記録・整理をおこなう時間の縮減がないように。
◇大切な教育活動:学習した内容を自分のものとして定着させるための、自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動

事項5
◆懸念・配慮すべき事項:穴埋め形式や選択肢形式の問題による演習の比率増大につながらないように。
◇大切な教育活動:問題に関わる概念を十分に定着させるためには、問題全体を書き写すなど、作業に一定の手間と時間を掛けることが重要。

事項6
◆懸念・配慮すべき事項:児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動の縮減がないように。
◇大切な教育活動:科学的な考え方を身につけさせる上で、対象とする事項について話し合う学習活動は、対面での直接的な意見交換のほうが優っているのが現状(やりとりされる情報の密度や即時性の点で)。

事項7
◆懸念・配慮すべき事項:プレゼンテーション偏重・文章力軽視意識の植え付けが起きないこと。
◇大切な教育活動:「本当に理解する」ために、「自分の考えを筋道立てた文章により説明する」能力を養うこと。

事項8
◆懸念・配慮すべき事項:教員の教科指導能力が軽視されること
◇大切な教育活動:教員が新たな教材や教育内容の変化に対応できるだけの教材研究の時間を継続的に確保すること。

事項9
◆懸念・配慮すべき事項:教科書採択では、デジタル教科書のみを対象とすることは、記述内容の適切さ、学習の進めやすさの評価がおろそかになる危険が大きい。
◇大切な教育活動:検定教科書は、見極めが済むまでは、紙媒体の使用を継続(ないし併用) すべきと考える。

「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望

情報処理学会ホームページ 最終更新日:2010年12月7日より

「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望

会長 白鳥則郎

このたび本会は,「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望(以下)を12月7日に文部科学省生涯学習政策局に提出いたしました.

一般社団法人 情報処理学会
社団法人日本化学会
日本化学会化学教育協議会
社団法人日本数学会
一般社団法人 日本地球惑星科学連合
日本統計学会
社団法人日本動物学会
日本物理教育学会
(五十音順)

理数系学会教育問題連絡会に加盟する上記諸学会は、「デジタル教科書」「デジタル教材」推進に際して、世界的に見て低くない我が国の教育水 準を維持し、さらに向上させるために、必要と思われる事項のチェックリストを作成致しました。

現在、関係各位において「デジタル教科書」「デジタル教材」(以下、単に「デジタル教科書」と記します)推進に向けての議論が進められていることと理解しております。理数系諸学会においても、今日の情報・通信 技術により実現可能となった「デジタル教科書」の活用は、教育における重要な課題でありかつ、将来にわたってわが国の教育を高めていく上で必須のものであると理解しており、それぞれ、その教育における活用 に取り組んで行きたいと考えています。

しかしながら、「デジタル教科書」は、あくまでも教育の手段であり、目的とするのは教育を高めていくことであるのを忘れてはなりません。特に初等中等教育における「デジタル教科書」の活用に関しては、生徒・児童の発達過程およびその教育内容との関連についてこれまでに行われてきた検討・試行・研究を、技術の進化を踏まえて、さらに深めていく必要があります。

このような考えから私たちは、「デジタル教科書」活用に向けての具対策が、教育そのものを高めていくという目的に適ったものになっていることを確認するため、下に示すとおりの9項目のチェックリストを作成致しました。このチェックリストは、理数系諸学会が「デジタル教科書」の活用に向けて活動する際に配慮すべき事項をまとめるという趣旨で作成したものですが、関係各位におかれましても、「デジタル教科書」の推進にあたっては、常にその施策が、本チェックリストの全項目を満たしていることを確認されますように、強く要望いたします。

事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時間の縮減につながらないこと。

事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみで科学的事項の学習とすることが無いこと。

事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。

事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。

事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題による演習の比率増大につながらないこと。

事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。

事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識の植え付けが起きないようにすること。

事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配 慮すること。

事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準とすること。

付記1 健康上の問題点に関する検討

上に記した以外の点として、情報機器の長時間にわたる使用が、児童生徒の視力をはじめとする身体能力やその発達に悪影響を与える可能性についての懸念について指摘しておきます。私供はこの分野の専門家ではないため、この件については事項として挙げませんでしたが、研究開発校など限定的な範囲において、十分に時間をかけた調査を実施することにより、デジタル教科書が子供たちの健康に悪影響をもたらさないかどうかについて、まずは検証することが、デジタル教科書導入の教育効果について考える前段階として必要だと考えます。

付記2 児童・生徒のプライバシーに関する検討

「デジタル教科書」に関連して、すべての児童・生徒の学習行動を電子的に記録・集約・保管して学習指導に役立てるという考えがあります。これが教育上有益であり得ることには異論ありませんが、当然ながらこのようなデータは高度なプライバシー情報です。児童・生徒ならびに保護者が認める者だけがこれらのデータにアクセスでき、また児童・生徒ならびに保護者がデータに対する制御を持つこと(必要な時に自分のデータを利用できるようにすること、またその意思に基づいてデータが確実に破棄可能なこと)を確実に保証すべきであり、その保証が行えるまでは記録・集約・保管を見合わせるべきだと考えます。

付記3 チェックリスト各事項の解説

事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時間の縮減につながらないこと。

解説: 理科においては、実際に実験などを行い、自然現象を観察することが、本質的に重要です。実験なしで教材のみで学習を済ませた場合、試験の点数は取れても、現実に理科的思考が必要な場面で対応できないおそれが大きいと考えます。したがって、デジタル教科書の教材を視聴・操作することで実験を代替し、実験の時間を「節約」するようなことが 起きないような配慮が必要です。なお、現状で既に、理科を十分学習せず、理科の実験が行えない教員の増加が問題になっていることから、そのような現状を改善し、理科の実験実施への敷居を低くするようなデジタル教材の導入は、大いに望まれることを付記します。

事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみで、科学的事項の学習とすることが無いこと

解説: 今日のデジタル映像技術の進歩はめざましく、「わかりやすい」映像を生成することが容易におこなえます。従来の授業形態では難しかった自然の記録映像等の視聴を行えるようにしたり、見ることができない空間や電磁場などの概念を視覚化することで把握を助ける、という形でのデジタル教材の導入は、大いに望まれることです。一方で、どんな現象でも自由にしかも直接に観測や実験可能だという誤った直観を醸成する危険性もあります。科学による自然の解明は、観測・計測困難なものを観測・計測できるようにするための技術や、観測・計測できたごく限られたデータを元に、モデルを構築して理解する活動によって支えられています。そのような困難や達成感を生徒が身を持って体験できるよう、デジタル映像の視聴は、教育上必要な範囲に留めるべきだと考え す。

事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。

解説:紙と筆記用具を用いて事項を整理したり、計算や証明の過程を適切に配置する訓練を積むことは、理数系の各科目において非常に重要な位置づけを占めます。これらのことがらをソフトウェア上で行うことも不可能ではありませんが、初等中等教育段階では、紙と筆記用具のような柔軟性や操作性に優るものはないと考えます。特に、学びの基本的な技法である、ノートの取り方、直接動かすことができる教具や図を用いて考える方法、観察や実験の結果を写真ではなく図や言葉で記録する方法、 表やグラフにまとめる方法、筆算等の計算の書き方、証明の書き方等が十分に身についていない学齢において、紙と筆記用具をソフトウェアで代替することは適切でないと考えます。

事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。

解説: 生徒が学習した内容を自分のものとして定着させるためには、自発的に学習内容を記録・整理する時間を十分取ることが不可欠です。デ ジタル教科書の使用によって、学習内容が短時間に効果的に提示され、教師の提示内容と同じものが即時的に手元に残せたとしても、それだけでは学習したことにならないのは当然です。デジタル教科書による学習の「効率化」が、生徒が手と頭を働かせて学習内容の記録・整理をおこなう時間の縮減につながらないように、十分な配慮が必要です。なお、「効率化」によって生み出される時間の余裕を、生徒による自発的な記録・整理のための時間増に充てられるなら、それは大変望ましいことだと考えます。

事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題による演習の比率増大につながらないこと。

解説: 穴埋め形式や選択肢形式の問題は、生徒が問題全体を書き写すことなく、解答欄だけに記入すれば済むことから、一見効率が良いように 思えます。しかし、児童・生徒が問題に関わる概念を十分に定着させるためには、問題全体を書き写すなど、作業に一定の手間と時間を掛けることが重要です。したがって、デジタル教科書により、この時間を縮減するような穴埋め形式や選択肢形式の問題の比率増大が起きないための配慮が必要です。

事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。

解説: 児童・生徒に科学的な考え方を身につけさせる上で、対象とする事項について話し合う学習活動は、さまざまな捉え方があることを身近に実感させ、それらを統合して真実を探究していく体験を持たせられるため、非常に重要です。デジタル機器を通した意見交換も可能ではありますが、やりとりされる情報の密度や即時性の点では、対面での直接的な意見交換のほうが優っているのが現状です。したがって、デジタル教科書の使用により、児童・生徒どうしの直接的な意見交換を行う学習活動が削減されることが無いような配慮が必要です。

事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識の植え付けが起きないようにすること。

解説: プレゼンテーションソフトウェアは今日、世の中で広く使用されていますが、その使い方の多くはカラフルな図や写真などで目を引き、 聞き手に「わかった気にさせ」「話者の主張を売り込む」ことを目的としたものです。しかし、スライドは筋道立てた文章を盛り込むものでは ないので、後からスライドを見ても正確な理由づけや論拠を読み取ることはできず、正確な情報伝達の文書として機能させることは難しいのが実情です。このようなプレゼンテーションソフトウェアに対する批判や警告、使用とりやめの提案は、情報技術の分野では1990年代から存在しています。学校教育の目的は児童・生徒に「わかった気にさせる」ことではなく「本当に理解させる」ことであり、また「自分の考えを筋道立てた文章により説明する」能力を養うことでもあります。デジタル教科 書の使用によって、教員が「プレゼンテーションによって理解させた気に」なったり、児童・生徒に「魅力的なスライドを作ることが大切」だと誤解させるような事態が発生しないための配慮が必要です。

事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配慮すること。

解説: 動画をはじめとする一部のデジタル教材は、それを生徒に使用させておくだけで一定の時間が消費されるという特性を持ちます。このことは、当該教科に対する十分な指導能力を持たない教員でも、形の上で は授業をこなせているように見せかけられることにつながります。しかし、生徒の本質的な学習や理解のためには、教員の指導能力が本質的に必要であり、なおかつ最重要の要因であることは言うまでもありません。 そして、新しい教材を導入するということは、その教室での使用に先だって、十分な教材研究が必要となることも明らかです。従って、デジタル 教科書の導入に当たっては、教員の教育能力を重視するという姿勢を明確に打ち出すとともに、各教員が新たな教材や教育内容の変化に対応できるだけの教材研究の時間を継続的に確保できるような配慮を強く求め ます。

事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準とすること。

解説: 「デジタル教科書」の導入に際して、紙媒体の検定教科書を全面的に廃止して電子機器に移行するという考えがありますが、これは極めて大きな変化であり、十分な時間を掛けて得失を見極める必要があります。たとえば、これまでのe-learningなどにおける知見として、児童・生徒の中には一定時間(たとえば30分)以上、コンピュータ画面を見つづ けることが困難な者が含まれるとの報告がありますが、紙媒体の廃止はそのような者にとっては「教科書で学習できなくなる」という重大な問題を招くことにつながります。このことを踏まえ、検定教科書については、少なくとも見極めが済むまでは、紙媒体の使用を継続(ないし併用) すべきと考えます。また、教科書採択において、デジタル教科書のみを対象とすることは、視覚効果や高価なアニメーションキャラクタの使用などが結果的に大きく影響してしまい、肝心な記述内容の適切さ、学習の進めやすさの評価がおろそかになる危険が大きいと考えます。このため、少なくとも紙媒体が併用される当面の期間においては、あくまでも紙の教科書を基準とし、そのデジタル版が併用される、という形を取ることを要望します。

付記4 参考資料

本文の検討に当たっては、さまざまな資料に基づく検討を行いました。 そのなかで本文の各事項に関係が深いと思われるものを、以下に挙げて おきます。

[1] 大学生にパソコン禁止令(Newsweekの記事の紹介)

http://www.newsweekjapan.jp/stories/us/2010/07/post-1436.php 

米国の複数の大学において、学習に対する負の影響が明らかであるという理由で、授業時のノートPC使用を禁止したという報告。

 [2] The Blackboard Versus the Keyboard --- Why more colleges are banning laptops in the classroom.

http://www.thebigmoney.com/articles/diploma-mill/2010/04/20/blackboard-versus-keyboard 

なぜ大学では教室におけるノートPC使用を禁止しようとしているのかについての論説。ノートPCは学習に対して強い負の効果をもたらしているという研究が紹介されている。

 [3] Scaling the digital divide: home computer technology and student achievement (米国の研究者による論文)

http://www.hks.harvard.edu/pepg/PDF/events/colloquia/Vigdor_ScalingtheDigitalDivide.pdf 

インターネットやコンピュータの導入は生徒の数学や読解の点数に負の統計的有意な影響をもたらしていることが分かったという報告。

 [4] Computers at Home: Educational Hope vs. Teenage Reality (NY Timesのサイト)

http://www.nytimes.com/2010/07/11/business/11digi.html 

低所得層の学童において、家庭にコンピュータが入ることの教育上の利得はほとんど無く、逆にコンピュータが入るとテストの成績が低下し、上位層とのギャップが広がるという報告。

 [5] パワーポイント絶対主義(New Yorkerの記事の翻訳)

http://www.blog.net/powerpt-j.htm 

パワーポイントによるプレゼンテーションの増加が、人々の議論する習慣やきちんと書ききちんと考えるという姿勢を奪い、思考力の減衰につながってるという論説。

 [6] 新・VDT作業ガイドラインのポイント(厚生労働省によるまとめ)

http://www.roudoukyoku.go.jp/roudou/eisei/anzen-vdt.htm 

VDTを用いる作業において、一定時間以上の連続作業を避け、休止時間を設けることの指針。ただし成人対象。

 [7] 教育情報化推進協議会, 鈴木寛文部科学副大臣記者会見録(抜粋)

http://www.eeaj.jp/public/doc/main_02_budget_ict_ishin.html 

鈴木副大臣の会見記録中で、学習履歴や学んだことの内容をシェアすることの利点について言及している。

 [1] 大学生にパソコン禁止令(Newsweekの記事の紹介) 2010年7月12日(月)13時09分

Newsweek.com https://www.newsweekjapan.jp/stories/us/2010/07/post-1436.php 

2022-08-05

「アメリカの農業の授業」を通してICT教育を考える

 

中学社会 アメリカの農業

アメリカ合衆国の農業をどう教えるか
~大規模・効率的・企業的だけでいいのか?

(東京 中学校S先生の報告)

はじめに 

この4月からの大きな変化は…
・新学習指導要領に準拠した教科書での授業
・3観点による評価・評定
・一人一台タブレット
通知表の書式

1 中学校社会科世界地理のなかで大切にしたいこと

①社会科は社会認識を育む教科
主権者としての力である「社会認識」をつくるための知識・理解を大切にする。
世界の人々の生活の課題の現代世界の諸課題につながっている。
②その地域(国)の生活と課題がみえるテーマをもりこむようにする。 
「なぜだろう」という問いが生徒から生まれることを大切にする。
人々のくらしの背後のあるものを考える。
③「物産地理」「産業学習地理」の知識詰め込みにならないこと。
「指導内容は削減」されていない。生徒の主体性を持たせるたえには計画が必要。

2 学習指導要領と新教科書はどう変わったか。(地理の場合)

・テーマを設けた学習になることが明確になっている。
視点が適切かの授業者の検討が必要。
・単元ごとに「学習課題」「確認しよう」「まとめよう」などの手立ても細かく書かれている。
子どもの「なぜ?」「どうして?」を喚起するものになっているか。
・「学習内容の削減」はされていない。
学習内容の見通しをたてて指導計画をつくらないと詰めこみの授業になってしまう

3 わかる・たのしい授業の課題 

① 子どものための本物の探求・思考とは何か (クレスコ198号石山久男)
「子どもたちは、科学的に確かめられた具体的な社会の現実と歴史の真実に、その中で真剣に生き抜いてきた人々の姿にふれたとき、新鮮な発見をし、本物の探求と思考に向かう」
②デジタル教科書をどう考えるか(中山さん報告より)
デジタル教科書について
① 3観点の評価にどう対応するか。

4 世界地理の計画

(1)6地域は、北アメリカ州→南アメリカ州→ヨーロッパ州→アフリカ州→アジア州→オセアニア州の順で学習してみました。
(2)北アメリカ州の指導計画
北アメリカ州(多くの人々をひきつける地域)5時間
1時間目 アメリカの歩み(自然 多様な人々 歩み)
2・3時間目 アメリカの農業の今とこれから(アメリ農業の特徴。課題は何か)
4時間目 アメリカの工業の発展(自動車からICT産業へ)
5時間目 アメリカの光と影(金持ちと貧困、差別などの課題)
(3)●中学地理の新教科書 「アメリカの農業」
「アメリカの農業」

5 私の実践 「アメリカ合衆国の農業をどう教えるか」

(授業プリント参照) 2時間扱い

【1時間目】

Q1   アメリカが世界の「食料庫」といわれる理由を説明しよう。   
(教科書P104の図2)
Q2   アメリカの農業従事者はどれくらい?
① アメリカの農業従事者 (   )万人(2017年)   
アメリカの人口の(  )%
Q3 少ない人口で農業大国なのはなぜ?
QRコードの活用 
アメリカ合衆国の農業 | NHK for School
Q4 農業地域はどうなっているか
・①~③でつくられている作物
・何が地域をわけているか
Q5 センターピポッとは何か。
機械化された「かんがい農業」の典型
Q6 フィールドロットとは何か
企業的・効率的農業の典型
●アメリカ農業のまとめ

【2時間目】

●前時の確認  QRコード2の活用
深めよう  
「アメリカでは( ア )農家が減少し、( イ )農家で( ウ )的な農家がますます重要になっている」(教科書P105)…ほんとうかな?
アメリカの面積別農場数
Q1  アメリカの農家は大規模な農家が本当に多いのか?
Q2 アメリカ農業をささえてきたのはどんな農家か。
・「家族経営の小規模農家」(教科書より)
・やとわれて働くメキシコ系移民
・なぜ「移民をやとう」だろう?
Q3 2017年ではどの規模の農家が増えているか。
・アメリカの農民は二つの道を選ぼうとしてる
Q4 なぜだろう。
・大規模農家をする人
・小規模農家をする人
※企業的、大規模な農業の抱える課題について補足が必要
・地下水の枯渇
・土壌流出
・バイオテクノロジーの活用 遺伝子組み換え農業 

●考えよう2 あなたならどちらの農家を選ぶか。その理由は? 
農業センサスの発表

6 生徒の意見

【小規模】

1小規模  ここ最近食べ物のロスが多いため出来るだけ地産地消を心がけ、減らしていきたいから。
2小規模 大規模は少し不安がある。小規模の方が高いが、安全を優先したい。
4小規模  今、注目されている「地球にやさしい暮らし」として、無農薬で自然を元にした食品を消費者は求めているから
6小規模 品質の洋物を作った方がいいから。
8小規模 買ってくれる人が安心できる。土地代があまりかからない。地域に貢献できる。失敗しても代償が小さくてすむ。
9小規模 少ない農場でありながら、おいしく作れるし、買った人もおいしいと思えば人気になるから。
12小規模 機械を使って育てるのではなく、自分の手で工夫して育てていきたいから。うまく育てられた時の達成感を味わえる。"
14小規模 なぜ小規模農家を選んだと言うと、新規参入のハードルを下げることができると思います。二つ目は、農地面積の狭い畑でさまざまな農作物を植えることで、台風などの被害を受けても、一部の農作物を植えることで「出荷がゼロ」という事態を避けることができるとおもったからです。
16小規模  機械で育てるのではなく、自分の手で工夫して育ててみたいから。また、上手く育てられたときに達成感を得られるから。"
17小規模 お金が掛からない。大規模は大雑把になるが、小規模は1つ1つに気持ちを込めて作ることが出来る。水の不足の問題もあるので。"
33小規模 災害が起きたり水不足になった時に損失が小さくて済むし、すぐに立て直せる。農薬を使わないでも管理できる作物の量だから。"
36小規模 農家の視点→質の良いものを作れる。体に良いものを食べてもらいたい。買う人の視点→体に良いものを食べたい。遺伝子組み換えした作物ではなく、安心安全なのを食べたい。"
37小規模 より良い品質のものを食べてもらいたいので、労働はきついかもしれないが、小規模がいい。大規模だと、自分での管理が難しいと思う。"
39小規模 農業を続けていくのなら、損をしない方がいいから。農薬を使わない方が、買う側も安心だから。農薬で問題が起きたら大変。"
40小規模 時間をかけて、より良い品種を作ることによって、経済的にまくいくと思うから。品質が良い方が買う人も多いと思う。
43小規模 体に良い無農薬で作っているので、安心して食べてもらえる。大規模農業は、多く生産するため、機械や薬を使ったりするので、小規模農業が世界にもう少し広まってほしい。地産地消は、地域を応援することに繋がるから。"
44小規模 手間暇かけて確実に育てられる方がいい。大規模は育たなかった場合の損害が大きいから。

【大規模】

3大規模 大きいけれど苦労した分、自分に喜びをくれる(お金がもらえる)
5大規模 お金が多く入り、そのお金を元に機械などを買えば、苦労せずに充実した生活が送れると思うから。
10大規模 儲かる。副業できる。
11大規模 土地が広いので、災害や干ばつなどの影響を受けても、企業力で再生できる。ただ、もしこの先、JA的な小規模農家連合が発足した場合、小規模へ転向するかもしれない。買うなら、少しばかり高くても、小規模農家のものを買いたい。品質も良く、農薬を使っていないのは結構大きいと感じるから。"
13大規模 小規模は新しい品種を作るのにいいと思うが、大規模でも、少しのスペースで作れると思うから。大規模は、値段を安く売ることが出来る。"
15大規模 多くのものを生産し、沢山の利益を得られるから。色々な実験(品種改良)ができる。
32大規模 農家の人が少しでも手間を減らせるようにという思い。たくさんの作物を育てられる。

7 まとめと課題

①「食料自給率30%の日本」「貿易自由化」「日本の農作物を外国へ売り込む」など、日本の食と農業のあり方をめぐっては、貿易のあり方とも結びついて、主権者として何を選択するのかが問われている。中学社会科3年間の中でその土台をつくりたい。 世界地理の中では、各国の農業の様子を取り上げる意味がそこにあると考える。他の地域では、「EUの農業政策」など…
②国連「家族農業の10年」国連総会で決定。2019年から28年までの10年間。
持続可能な農業のあり方が世界でも問われている。コロナ禍のなかで、メガファームでは生き残れないという主張もでてきている。教員も勉強しながら、生徒とともに考えていきたいテーマ。
③教科書の枠のなかの「アメリカの農業」のイメージが固定化されてしまう。アメリカの農民たちも模索している現実があるということを知らせたい。
教科書(帝国書院)の記述より

8.デジタル教科書・デジタル教材について

①.資料「アメリカの面積別農場数」の表を見てください。面積毎の農家数とそれが全体に占める割合を見ると、アメリカは「大規模な農業」という言葉だけでまとめるのは難しいことが分かります。1000エーカー以上の大規模農家数は、200万戸という農場(戸)全体の8%です。
②.デジタル教科書・デジタル教材がセットで配られるときに気を付けたいこと、危惧することがあります。
〇教科書の記述をもとに、便利なデジタル教材を使うと、アメリカの農業は「大規模な農業」だと、「わかりやすく」生徒に指導できるでしょう。しかし、上に述べた様に、この枠の中だけで学ばせるのは問題です。
多忙な学校現場では、自主的な教材研究の時間が持ちにくいです。すると、デジタル教科書とデジタル教材で授業が「完結」して、画一的な教育が広がる恐れがあります。

9.大切にしたいこと

〇自主的な教材研究で「アメリカの農業の実態や課題は何か」と教師自身が学ぶことが出来れば、「多面的・多角的に考察して」(学習指導要領にもある文言)、豊かに学び合う授業が出来ます。
〇生徒の発達段階に即した自作の教材や様々な資料を活用して豊かに学ぶためには、教師の専門性が尊重され、そのための教材研究の保障が不可欠です。また、今まで積み上げてきた民間教育研究団体の自主的な豊かな実践に学ぶことが、大切だと思います。「どのように効率的に学ぶか」に焦点を当てるのはなく、教材そのものの研究を土台として(学問研究の成果)、「何を学ぶのか=具体的な現実の姿と課題」を大切にしたいと思います。

〇参考
学習指導要領の地理的分野で、アメリカについては次の様に書かれています。(下線は筆者)
「④ 北アメリカ州:<主題例>農業地域の分布,産業構造の変化に関わる課題など
北アメリカ州を大観する学習を踏まえて,例えば,アメリカ合衆国(以下,アメリカという。)を対象に「アメリカでは農業地域の分布にどのような特色があるのか」,「なぜアメリカは,世界有数の経済大国となっているのか」などといった問いを立て,前者の場合,アメリカの自然環境,都市の分布,交通網の整備などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,産業の立地に関わる一般的課題とアメリカにおける地域特有の課題とを捉える。
授業プリント 問1~問3

問4・問5

「深めよう」

「考えよう」


資料 フィードロット

●用意した映像資料 
フィードロット・センターピポット
土壌流出・塩害
従来のトウモロコシと遺伝子組み換えトウモロコシ

●参考文献
「農業大国アメリカで広がる『小さな農業』」(河北新報記者 門田一徳著)家の光協会
「13歳からの食と農」(関根佳恵著)かもがわ出版

2022-08-04

学校現場からの報告:「デジタル教科書・タブレット1人1台」の現状と課題

タブレットが導入され、使用が始まった学校現場の実態①(2021年9月時点)

目次

◆はじめに
1.まず、授業外でタブレットを使い始めた
2.授業での使用が始まる
〔小学校の活用事例〕
〔中学校の活用事例〕
〔支援学級の活用事例〕
3.自主的な工夫での利点
4.数多くの問題点・課題
・Wi-Fi環境等が整っていない・研修が不十分な中でスタートしたための問題
・「タブレットありき」の押し付けに困惑
・生徒指導や健康上の問題
・新たな保護者の負担増
・自治体にとっての財政負担
5.大切ことは、「教員の専門性と自主性が尊重される環境で、ツールとして創意工夫で使う」「よくわかる授業のためのツールとして」
6.寄せられたご意見など(学校・地域の声)

◆はじめに

東京郊外のA小学校(児童数500人)の2021年度の教科備品の予算は30万円でした。授業で使う楽器や顕微鏡など2万円以上の教科備品費の総額です。
一方、この学校にはタブレットに2250万円の税金が投入されました。このほか校内Wi-Fi環境の整備やソフトの使用料、週3回1回3時間のICT支援員配置費などを合わせると2500万円以上。なんと学校の教科備品費の80年分以上にもなります。
「Society5.0時代」「予測困難な時代」の掛け声の中で、「新学習指導要領の着実な実施」と「ICTの活用」で「個別最適な学び・協働的な学び」をすすめるという中教審答申の具体化が、急速に始まっている学校の実態を報告します。

1.まず、授業外でタブレットを使い始めた

【学校・家庭・市教育委員会をつなぐ手段】

コロナ禍、様々な活用が始まっている。タブレットを文房具のように毎日持ち帰っている市もあり、次のような事例が報告されている。
〇生徒の健康の記録を各家庭で検温して打ち込み、学校では担任がタブレットで確認(毎日対応)。
〇家庭への・家庭からのさまざまな連絡。アプリを用いて、家庭からの欠席の連絡。(中学校では生徒による保護者「なりすまし」連絡が問題になり、折り返し電話で確認している例も)。 
〇「クラスルーム」で保護者会の出席確認、Zoomで保護者会、移動教室の説明会、個人面談を実施。PTAの会議をZoomで開いているところも出始めた。
〇土曜授業をオンライン授業(生徒は家庭で参加)
管理職から「オンラインでやるように」との指示で行われ、道徳授業を実施した事例もある。担任からは、意味がないとの声が寄せられている。
〇市教委主催の各種主任会や初任者研修をZoom。往復の移動時間がなくなり、これは「働き方改革」になると先生方に好評。初任者研修では、浮いた移動時間を使って研修終了後のレポート作成の時間をこの中に組み込んでほしいとの要望もある。

【学校での教科外の活用】

〇アンケート機能を使って、学級での様々な調査・アンケートに活用する。
〇全校・学年単位の朝会やさまざまな集会、生徒会や委員会・部活紹介などをZoomで実施。離任式をZoomでやった学校では、式の終了後に来校した離任された先生方が廊下を通って全校児童に顔を見せる工夫をしたとの報告もある。
〇学校行事を、個人情報に配慮して遠方から撮影して動画で配信。
〇教科書を忘れたときに撮影して使用。
〇学活の時間に、生徒が投票機能を使う。
〇参観できない行事を写真機能で児童が家庭で保護者に見せる(展覧会の参観ができないので、児童が自分の作品を写真に撮りながら解説。会場風景は教員が遠方から撮影。それを合わせてタブレットを自宅に持ち帰り保護者に見せた事例)

2.授業での使用が始まる

〇タブレットの使用は、市・学校・先生間で使用頻度が異なる。研修がほとんどされずに始まったことで多くの問題が起きている。ICT担当者の研修会を市教育委員会が実施して、その報告を各校で行ったり、校内で集中的に研修機会を設けたりしている。
〇教科学習では、調べ学習の時に課題を検索してまとめるためにタブレットを使うことが多い。
〇音楽では、楽器として演奏に活用。
〇数学では、「クラスルーム」を使って、問題プリントを配り個別学習。最後に回答を配って自己採点をする。

〔小学校の活用事例〕

〇体育で、2人1組になり障害走の走りの様子を互いに撮影して、フォームの改善などの話し合いに生かす。
〇カメラ機能も多く使われ始めた。小学校低学年で、本の紹介をこの機能を活用して行い、互いに見せ合い、「だれが紹介してくれた本を読みたくなりましたか」と担任が発問。友だちの紹介文のどこがよかったかを話し合う。
〇(学活)給食の片づけ方 子どもが動画で撮って発表。「なるほど」とみんなが納得した出来栄え。
学活「給食の片づけ方」
〇国語「〇〇さんへのお礼の言葉」。
話し言葉(表現)を書き言葉に変えて残すことが出来る。文字がまだ書けない1年生やLDで文字の苦手な子どももiPadのソフトを使ってマイクボタンを押すと、子どもがしゃべった言葉が文字になる。それをGoogleクラスルームの共有掲示板に保存する。
〇(理科)4年:カブト虫の幼虫・蛹の観察
幼虫やさなぎは、飼育中は暗くしておく必要があるので観察が難しい。学級の生き物を世話する子どもたちがこのようにして飼育して、その動画を撮って、みんなに見せた。
理科4年「季節と生き物 夏」
〇算数eライブラリで課題別問題を解く。一斉休校中には、家庭学習の課題として使った。
〇小学校英語教科書のQRコードでサイトにつながる。まだデジタル教科書ではないが、正しい発音を(VTRの音声で)視聴する。
〇(調べ学習)「まるうつしはダメ」の指導
「富士山について調べよう」の課題で、サイトを紹介して調べさせた。サイトの一部を丸写しをした例が多くあり、それらを電子黒板の大きな画面で見せて、書いた内容を質問したが、まる写しなのできちんと答えられなかった。このことから「まる写しはダメ。自分のことばで・・」と指導した。それ以降、まるうつしではなく工夫するようになってきた。
〇運動会の民舞を先生が見本で踊る動画
家庭で練習するときにお手本として使わせた。
〇(理科)電気の学習でスプレットシートを活用。
各自が書く⇒それを一覧にして電子黒板の大画面で見る⇒個人の小さい画面と電気黒板などの大きな画面の両方を使うと効果的。

〔中学校の活用事例〕

〇(国語)調べ学習
調べる課題を出して、生徒が検索して調べて、コピーして、それに対す自分のコメントを書く。1時間に調べ学習20分、それを3回やり、書いたものをグループ内で共有する。順番に発表して、質問に答える。しかし、学級全体での意見共有が難しい。(電子黒板が学年共有なので使いにくい)
〇(社会)QRコーでNHKforSchoolにリンクできて便利だが、課題がある。例えば「アメリカの農業」では、リンクするNHKforSchoolで見ると「大規模・・」だけが出てくる。しかし、今のアメリカの農業は様々な課題がある。そうした資料は見ることが出来ない。タブレットで調べてみることの範囲が限られて学ぶことの制約がある。教師が適切な教材を用意して、豊かに学べるような工夫が必要。

〔支援学級の活用事例〕

〇自分で発言して表現することが苦手な子どもが、タブレットを使って書くと自己表現ができる。
〇子どもが話す様子を動画に撮って一緒に見る。舌の動かし方の指導など個別指導に生かせる場面がいろいろある。
〇NHKforSchoolなどの動画を見る,総合的な学習の時間に日記を書くなど実態に応じて工夫。

3.自主的な工夫での利点

〇授業中、わからないことを調べることができる。
〇情報・意見を共有しやすい。
〇みんなの前で意見を言うことや作文が苦手な生徒が、タブレットは普段の生活で使っているツールなので、書いたり意見発表したりすることがスムースになる。
〇特別支援級では、「自分で発言して表現することが苦手な子どもが、タブレットを使って書くことで自己表現ができるのでよい」「子どものやりとりにも使える」などの報告もある。
〇コロナが心配で保護者が子どもを学校に行かせていない家庭向けに学校の様子を見せる。

4.数多くの問題点・課題

① Wi-Fi環境等が整っていない・研修が不十分な中でスタートしたための問題

〇日によっても、時間帯によっても、授業中ネット検索するとつながりにくいことがある。1時間目はつながりやすいが5時間目はつながりにくいなどの報告もある。
〇多数で使用するとフリーズしてしまい、時間の浪費になっている。授業と校務に支障が出る。
〇市によっては、校内Wi-Fi環境の整備に全市的に追加工事を行ったところもある。当初請け負った業者が「全校で何人ぐらいが一斉に使うとの話を聞かされずに工事をした」と話している事例もある。
〇政府の政策で、短期間で一斉に配布されたので教員への研修がほとんどなく、現場へ丸投げされた。そのため、感染対策に加えてタブレット対応を急がされ、勤務時間が更に大幅に超えてしまっている。初期設定などでは混乱した学校も多くある。
〇ICT支援員は週に3日程度の数時間で、質問に答えてもらえない例も報告されている。専門力量のあるICT支援員の配置を求める声がある。市によっては、まだ支援員が配置されていないところがある。

② 「タブレットありき」の押し付けに困惑

〇校長や市教育委員会からの一方的な指示で、タブレットありきの次のような指示が各地から報告されている。
「毎学期の校長による授業観察の時(ママ)は、タブレットを使うこと」(人事考課の資料)
「学校公開でタブレット使用の授業をすること」
「夏休み中に市教研部会で●本の動画をつくること」
「校内研究授業はタブレットを活用すること」等。

③ 生徒指導や健康上の問題

〇子どもも先生も目の疲れがたまる。
〇ルールやマナーについての課題が多い。「クラスルーム」のソフトでは、「裏クラスルーム」をつくり、特定の仲間で、先生に分からないように、友だちをいじるなどの事例もある。こうした事件やルール違反が見つけにくいこと、コロナ禍で保護者への説明・啓発の時間がとれないとの声が各地から報告されている。
〇「タブレットの扱いに詳しい生徒が、制限をくぐりぬけて、よくないビデオなどを見ている」「ゲーム等をダウンロードして、休み時間等にやっている」など、配布して日が経っていない中でも、生活指導面で新たな問題が出ている。
〇研修やルール作りもままならないうちに、急いで配布して使用開始するようにとの指示があったために、多くの問題が噴出している。

④ 新たな保護者の負担増

〇子どもがタブレットを壊した時の修理費用については自治体によって対応は異なっている。共通しているのは、「学用品の貸与」のため、保護者は、「破損した場合は弁償する」との誓約書の提出を求められていることである。タブレットは子どもたちに「貸与された」今まで経験したことのない高額な学用品である。
〇自治体によっては、破損した場合の保険に入り、その保険料が新たな保護者負担になっている(年間で約4,000円)。小中学生が3人いる家庭では毎年12,000円もの負担増になる。そのため、学校によっては校長から先生たちに「今までの私費負担の部分を減らすように」と教科ごとに画一的な削減の指示が出て混乱したところもある(組合の交渉でその後画一的な削減の指示は是正されたが)今までにない保護者負担増。
〇Wi-Fi環境等が整っていない家庭がある実態から、自宅学習に使う場合の対応は、自治体によって異なる。
〇ある市では、全員のタブレットに公費(市財政)で2ギガ入れて、Wi-Fi環境等が整っていない家庭学習で使うようにしている。2ギガ使い切った場合は学校全体でプールしているので、それで対応するという。
〇ある市の教育委員会からの保護者へのお知らせに次の様なことが書かれていた。
「持ち帰りに当たっての事前準備(Wi-Fi環境整備)のお願い
回線・通信費用は保護者負担となりますが、御家庭にWi-Fi環境があれば、タブレット端末を学校で使用するときと同様にお使いいただけます。Wi-Fi環境がない御家庭におかれましては、この機会に導入の検討をお願いいたします。なお、就学援助費等受給世帯のうち、Wi-Fi環境がない御家庭には、市への申し込みにより、市が調達したモバイルルーターの貸し出しを行う予定です。今後、就学援助費等受給世帯に対して、ご案内をいたします。」(下線は筆者)
就学援助を様々な理由で申請していない家庭・コロナ禍で収入が激減して家計のやりくりが大変な家庭・・・。これはその真っただ中の2021年6月に市教育委員会から出された「ご案内」文書である。

➄自治体にとっての財政負担

〇タブレットを5年間のリース契約になっている自治体も多い。5年後に国が今回と同様な財政措置をするのか教育委員会も注視しているが、先行きは不透明である。
〇タブレット導入による様々な財政負担が自治体に生まれているが、学校教育全体の予算措置をどう確保するかが大きな課題になっている。ある市では、当初の工事では校内Wi-Fi環境があまりにも悪く学校から苦情が市教育委員会に届いた。そこで、で追加工事をしたところもある。
〇支援員配置費用も多くの費用がかかり、市議会では、議員から、「これだけの出費をするのだからそれに見合った成果を」と求める意見が出され、市教育委員会は、目に見える「成果」を示そうと学校現場に様々な指示が出されている実態も報告されている。

5.大切ことは、
「教員の専門性と自主性が尊重される環境で、ツールとして創意工夫で使う」
「よくわかる授業のためのツールとして」

学習会で、ある先生が次の様に発言した。
「便利だからすぐやるのではなく、生徒が書くことのその意義を考えたい。明日の持ち物の連絡や板書を撮ったりすることはどうなのか。書くことで身につけることをもう一度考えたい」
また、こんな発言もあった。
「学校に配置されている支援員のやることと教員のやることの仕分けがはっきりしない。情報担当(複数)がいるが、様々な作業が大変。教員は指導に徹してサポートしてもらうことを明確化することが大切。」

行政の一方的な「タブレットありき」の押つけが強まる中で、こんな発言もある。
「市教育委員会から市教研の部会で数分程度の動画作成をするようにとの指示で、各部会で10本夏休み中につくることになった。対応は部会によって少しは違うが、これが本当に活用できるのかと職員室では話している。一方的な指示ではなく子どもの実態をふまえて各学校で相談してやることが大切なのに・・」

一方、こんな自治体もある。
「わたしの勤める市では、ICT活用は3年間かけて試行・検討することでスタートしている。市教研の部会でクラスルームを作り、自由な情報交換をはじめ、各学校でそれぞれ工夫している」

【よくわかる授業のためのツールとして】
〇学び合う授業をつくるための課題
タブレットを活用したある授業の流れを紹介する。
① 教師が学習課題を出す。
② タブレットを使って各自で検索して調べ、自分のコメントを書く。
③ タブレットを使って書いたものをグループ内で共有し、順番に発表して、質問に答える。
④ 学級全体での情報と意見の共有
この流れで授業をしている先生からの報告では次のような感想が寄せられている。
「タブレットでは画面が小さいので、学級全体で情報や意見を共有することが難しい。電子黒板と合わせて使うと効果的だが、電子黒板は学年共有なので活用しにくい」
私も理科の授業では、電子黒板を多様な使い方をしてきて、その効果を実感している。個人で使うタブレットと、全員で共有する大きな画面の電子黒板やプロジェクターと併用できれば多様な学習形態が工夫できるという意見が寄せられている。
しかし、多くの地域でその環境がないのが実情である。全国各地で「先進例」として紹介されている実践は、タブレットと電子黒板やプロジェクターの併用が多い。
調べ学習での活用やグループ内での意見や情報の共有という面では多くの報告があるが、学級全体での学び合うという面では多くの課題があるとの声が寄せられている。
〇先進例として文科省や企業が推奨している実践例を教科の本質から見ることが大切である。
理科の場合を例にすると、基礎的な自然認識をその単元・授業でどのように育てるかが大切。しかし、実際にはタブレットをどう効果的に使うかに光が当てられている例が多い。タブレットを活用して学習指導要領の内容の徹底の手段として使われている実践が多くみられる(今後の配信で具体事例の資料提供を予定)
〇「個別最適化」学習の名で、学び合う授業より「同じ時間に子どもの『能力』によって違う学習に取り組む」授業の流れも出ている。算数・数学のQubena(キュビナ)(注)のようにAI(人工知能)が、子どものつまずきの原因を分析して、個に応じた問題を個別に次々に提示するスタイルの授業も出てきている。

(注)Qubena
①AI(人工知能)を搭載した算数・数学の教材
②AI(人工知能)が、つまずく原因となっているポイントを特定し、それに合わせて問題を次々に出していく「個別最適化」のねらいに沿った教材(子どもは、ノートのように手書き入力する)
③全国100以上の自治体、750以上の公立・私立の小中高等学校で合計20万以上のユーザーがあると宣伝されている。

〇「『デジタル教科書』推進に際してのチェックリストの提案と要望」が8つの学会から文科省に出されている。タブレットの一人1台導入の今こそ、この内容は、深く受け止める必要がある。(一般社団法人情報処理学会・社団法人日本化学会・日本化学会化学教育協議会・社団法人日本数学会・一般社団法人日本地球惑星科学連合・日本統計学会・社団法人日本動物学会・日本物理教育学会)
 
〔参考〕チェックリストの10項目(詳細は今後、情報提供の予定)
事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時間の縮減につながらないこと。
事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみで科学的事項の学習とすることが無いこと。
事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。
事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。
事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題による演習の比率増大につながらないこと。
事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考えや意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。
事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識の植え付けが起きないようにすること。
事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配 慮すること。
事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準とすること。

6.各地の学習会などで寄せられたご意見など(学校現場・地域の声)

私が講師をつとめた多くの研究会・学習会・教育カフェなどで寄せられた保護者・市民・先生方のアンケート等から、その一部を紹介する。

◇個別も大切だと思いますが、集団で得られることも多いです。個別と集団の両輪で人格形成ができると思いました。ベテランの先生のノウハウをデジタル教材に盛り込むシステムを作った方がいいかもしれないなぁ…、と思いました。
◇自分自身はアナログ人間で、パソコンもタブレットもスマホも持たずに生活しているので、GIGAスクールと言われただけで恐怖を感じてしまうのですが、でも実際の世の中の実体に照らせば、全然使わないというのも無理だろうし、タブレットを使うメリットについても学習しながら、ツールとして使い方を考えていくことが大切なんだな、と思いました。
◇よく分かるツールとして教員が主体となって使い分けることが大切と分かった。そのためにどんな研修が教員として必要か。
◇少人数学級でないとデジタル教科書もタブレット使いこなせない。
◇タブレットを使おうとも使わなくとも「何をねらうのか」が明確な授業が大切だと改めて感じた。
◇タブレットを本当に子どもたちと教職員のために有効に活用するためには、私たちがそれに対する理解と知識をしっかり持っていくことが大切だということあはよく分かりました。また「教科書は自由発行、採択は学校や教員」というのが世界の趨勢で、その流れの中でこそタブレットも効果を発揮するという話に「なるほど」と思いました。
◇「個別最適化」というのは問題だと思います。能力の固定化につながる問題だと思いますが!! また、子どもたちの中にも全く知らない子と、とてもよく知っている子の二極化が見られると思いますが。
◇ICT活用の光と影が理解でき、これからの時代に生きる子どもたちにとって最適な学びを模索し、活用情報をこれからも共有していくことが大切だと思いました。
◇タブレットを活用する場面としない場面を教員が判断していくことが大切だと感じました。
◇タブレットやデジタル教科書、GIGAスクール、心配です。繰り返し書いたりまとめたりしながら脳の発達をする成長期の子どもたちの健康被害は大丈夫かと!話し合い活動も大切です。これからどう付き合っていくか研修していきたいです。
◇ICTを進めるのにずっと教育界が二の足を踏んでいたのに一気に変化して、混乱は隠せません。あわてずに楽しみながら子どもたちと前へ進んでいきたいです。
◇教育で大切なのは「人材育成じゃない!!人格形成だ」という言葉、ずっしりひびきました。教育が集団での交流ができるからこそ民主主義が実体験できるんじゃないかと思う。
◇日本より進んでいる世界のデジタル教科書への取り組みの+-面を知りたいです。子どもの人格の完成をめざすのが大切だと思いました。
◇児童はタブレットが日常の道具となり上手に使っています。ただ、気になるのは視力の低下、対話によるコミュニティがうまくいかない児童は増えるのではないかと今まで大事にしてきたものを同時に行なっています。教師の仕事が簡易になったとはなかなか難しい現状です。経済のための教育に巻き込まれないよう児童の未来にアップデートし続けたいと思っています。
◇GIGAスクール構想や新学習指導要領の改訂等に含まれている、これから先の時代はICTを駆使して使いこなし情報を効果的に表現していく、といった方向性に突き進んでいるのでしょうね。そこには、子どもの発達とか認識を深めていく・広げていくという視点がすっぽりと抜け落ちているように思います。そして、それが、現在の教育方法や子どもとの関わり方に教育委員会や管理職が手も口も上から一方的に口を出し統制してくる(そして、それに対して抵抗できない現場)ことが常態化している中で進められているということが大問題なのでしょう。
◇GIGAスクール構想を批判的に分析していくことと、現在の管理的な学校状況・教育状況(教員の自治が無い状況)を批判していくこと、そしてそれに対するオルタナティブ(対抗軸)をしっかりと繰り返し立ち上げていくことが必要だと考えています。
◇「ロイロノート」?という用語も初めて知りました。とにかくタブレットは渡ってしまったのですから、子どもたちが考えを深めるためのツールにしていけることが大事だと思います。
◇子どもたち個々の人間としての成長のためではなく、戦前は国家のため、今は経済界のための公教育というのは悲しいです。タブレットによる国語でも、子どもたちは、どんなふうに書き方を学んだのかなと思います。学校司書の先生が、タブレット導入後(毎日使っている)、子どもたちはそちらを好み、本を読むということがよりできなくなっていると言っていました。
◇(タブレット活用に学習で)真の学力がつくのか?調べた時にはわかった気になるが、そのままにしておくと忘れてしまうのではないか。正しい言語を身につける、難しいことを簡単に分かりやすく表現できる、手間ひまかけて書くことが大切。
◇「個別最適な学び」の名のもとに能力主義・学力格差が拡大しないようにしなければならないと思う。
◇財政的な負担は?「GIGAスクール」支援員の数も能力も自治体によって大きな差がある。保護者に新たな負担を強いることもある。(家庭でのWIFI環境整備、タブレット破損時の対応等) 
◇視力等の健康的な問題は?
学校でのタブレット使用によるきちんとしたデータがないので、結論は出せない。これから医学的な検証が必要。学校以外の場でのゲームやYouTube等の利用で問題が起きる可能性の方が高いのではないか。
◇子どもたちにどんな力を身につけさせるのかを明確にして、そのためのツール(道具)として活用していくことが必要だろう。そのために新たな学習方法の研究も必要になってくる。
◇職員室で話していたら、ベテランの同僚が、
「理科の実験で何本もの試験管の中の化学変化の様子を観察させ色鉛筆で書かせてきた。タブレットで写真を撮るよりも、その後の考察の書き方が違う。自分で見て書いて実感して考えるためには、タブレットをどこで使うかよく考えなくちゃね」と話していたので納得した。
◇緊急事態宣言の地域が広がり、文科省から通知が出ています。各地の教育委員会からは、これに関わり、「オンライン授業」の指示なども出ています。学校現場に知らせる前に保護者宛てのお知らせなどが教育委員会から発信されています。条件整備がない中で、また学校内での話し合いのない中で、保護者から学校に問い合わせや苦情も寄せられ、学校現場で「保護者に説明できない」と困惑している報告が各地から寄せられています。これらについては、後日、報告の機会を持つ予定です。

2022-07-16

「教科書レポート2021」の紹介

【ご案内】
今年の教科書レポートは「特集2」でデジタル教科書問題をとりあげています。

特集2 デジタル教科書をめぐる状況 
デジタル教科書をめぐる文科省の動きと諸問題
GIGAスクール構想の現実 (2021年春)
タブレットが導入された学校現場の実態
デジタル教科書を制作する職場の実態
教科書レポート2021


教科書レポートバックナンバー

2022-06-21

SDGsで調べ学習・コンペ(中学校 総合)

ツールの一つとしてのタブレット活用
SDGsで調べ学習・コンペ(総合)

中学校での実践

調べ学習・コンペ形式で

私の学年(中2)では、職場体験が延期になり、ぽっかりあいた総合をどうしよう、ということで英語、理科、社会で同時にたまたま取り組んでいたSDGsを追究しよう、ということで例年やっている個人レポートの題材を職場体験からSDGsに切り替えて取り組ませました。

最終目標を「発表」にせず、発表した上で学年で取り組むことをみんなで決める、という「コンペ形式」にしました。

明日からの3日間、学級委員の司会のもと、まずはクラスで発表会、クラスからABC部門別(A:学年で取り組めること、:B各家庭で取り組めること、C:は関われないけどメッセージとして投げかけたいこと)に代表を選び、来週に学年での発表会をし、みんなの投票を基に学級委員会が学年で取り組むことを決める、というプロセスを経ています。

この調べ学習は個人で行い、テーマはSDGsの目標から各自が選び、進めさせました。最初に配る紙の資料、レジュメはかなり気を遣って作りこみましたが、調べは書籍、タブレット等でやらせ、レポートは紙に鉛筆で書き、清書はペン書き、写真や資料はノリで貼る、という前近代的な形にしました。

方法の一つとしてのタブレット

この間、私は一人一人がタブレットを持っている良さをとても感じました。コロナは嫌だけど、考え方を変えれば様々な教育上の工夫が出来ることを実感しています。

でも、それはタブレットをどう使わせるか、ということをほぼ全く考えず、今の地球に生きる私達としてどう生きるか、という大きなSDGsのテーマをみんなで追究する中で、方法の一つとして、インタビュー、アンケート調査、書籍、新聞、パソコン、という位置づけで行ったから、逆にその特性を大人も子どもも実感できたのだろうと思っています。

実際は、本の方がいい、と図書室の書籍を活用した生徒もかなりいました。そこでレポートの幹をつくり、詳細をパソコンで調べる、という形を取る生徒も多かったです。

具体的な取り組みを提案することが今回のまとめなので、様々な取り組みやNPOの紹介など、新しい、かつ詳細な情報を手に入れる必要があり、その意味ではパソコンの特性として、自分のためにもなり、周りにも紹介できる、という強みをとても感じました。

大人も子どももいろいろ勉強になっている取り組みでした。

個人的には、教員になる前、海外ボランティアに参加し、開発教育が大きなテーマの一つだったので、ここに来てこんな取り組みができるとは思っていなかったので、とてもやりがいを感じています。それがPCを持っている・いないの経済格差なく取り組ませられることが最大のポイントです。PCに振り回されることなく、何を学ばせたいか、を追い求めたいです。

2022-06-19

すすむ教育 の ICT 化で 学校は?~大切にしたい 子どもの発達と学び~

目次
1.デジタル教科書とは?(タブレットはそのために配布)
2.経済界(経団連)の提言(2020年3月)
3.デジタル時代の世界の教育「海外教科書制度調査研究報告書」より
4.タブレットの使用が始まった学校現場の実態は・・・・
5.世界の流れに沿って、人格の完成をめざす
=どの子も伸ばす教育を創造的に発展させるためにデジタル教科書・タブレット活用の実践と交流の輪を広げましょう
◇今までの教育姿勢は変えずツールとして
◇気軽に交流する場、Zoom併用で少人数で何回も
◇積み上げてきたすぐれた民主的教育実践をタブレット活用バージョンに
(ベテランと若手のコラボで)
6.タブレット活用「先行実践」授業の検討①
◇小5 理科 メダカの誕生
7.タブレット活用「先行実践」授業の検討②
◇小2 国語 説明のしかたに気をつけて読み,それを生かして書こう

1.デジタル教科書とは?(タブレットはそのために配布)

デジタル教科書とは?
2.経済界(経団連)の提言(2020年3月)

経済界(経団連)の提言

3.デジタル時代の世界の教育
(「海外教科書制度調査研究報告書」より)

デジタル時代の世界の教育

4.タブレットの使用が始まった学校現場の実態

学校現場の実態

5.世界の流れに沿って、人格の完成をめざす

どの子も伸ばす教育を創造的に発展させるためにデジタル教科書・タブレット活用の実践と交流の輪を広げましょう
デジタル教科書・タブレット活用の実践と交流の輪

6.タブレット活用「先行実践」授業の検討①
◇小5 理科 メダカの誕生

小5 理科 メダカの誕生①
小5 理科 メダカの誕生②

7.タブレット活用「先行実践」授業の検討②
◇小2 国語 説明のしかたに気をつけて読み,それを生かして書こう

小2 国語 






2022-05-25

GIGAスクール構想の推進役は?官民(政府と産業界)

情報通信産業の巨大企業を中心にした一般社団法人ICT CONNECT 21が、GIGA スクール構想推進委員会を設立しました。その構成員名簿を見ると、このGIGA スクール構想の推進役が誰なのかが見えてきます。そして、文部科学省のGIGAスクール実現推進本部と連携していることもよくわかります。GAFA M(注)5社の中の4社が中心的な役割を担っていることも見えてきます。                               

(注)GAFA M(ガーファム)とは、米国の主要IT企業のグーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple)の4社にマイクロソフト(Microsoft)を加える。             
文科相のHPを見ると、リンク先にこれらの企業が出ています。
GIGA スクール構想の推進役
 
文科省HPより


一般社団法人ICT CONNECT 21



特別会員・会員


文部科学省 GIGAスクール実現推進本部


EdTechを活用した Society 5.0時代の学び

GIGAスクール構想推進委員会


会員企業一覧

2022-05-22

実践から考えるGIGA スクール構想(体育)

~子どもの事実を大切に~

2021年 学校体育同志会東京支部東京支部第2回学習会(東京支部 Yさん)

第2回学習会が、11月28日(日)14時より、オンラインで行われました。
この学習会の発端は、知人の小学校教員OBで様々な教育問題に取り組んでいるN氏より「ロイロノートを体育でどう扱うか、検討のお願い」というメールが届いたことでした。
研究部長に相談し、常任委員会で検討し、支部学習会に若手の協力を得て取り上げることになりました。
この問題の社会的な背景や全体像も視野に入れつつ、学校現場の特に体育の授業でどう活かせるか、現状と問題点は何かなどについて、交流し話し合いました。
参加者は、16人でした。

冒頭に、「GIGAスクール問題をどう受け止め、どう対処するか」と題して発題を述べました。
この1年間に発刊された雑誌のこの問題を扱った記事を紹介しつつ、この問題が、財界・政府の進める「Society5,0構想」からきており2919年に予算化されたことなどを報告し、同志会らしさを大切にしてタブレットありきにはならないことの大切さなどを述べました。
※GIGA:global and innovation gateway for all 全国の児童・生徒に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文科省の取り組み  
ICT:information technology 「情報通信技術」の略

引き続き、研究部長の司会で学習会を進行しました。
まず、現場の実態を知ろうということで、3人の方から報告してもらいました。

Aさん:小2の実践

タブレットを使う前と同じでは意味がないと考え、工夫している。
跳び箱の授業で、動画を撮影し跳んだらすぐに自分の動きを確認できるのがメリット。
難点としては、タブレットの扱いに慣れていないので操作に時間がかかり、跳び箱を実際に跳ぶまでに時間がかかってしまうことがあった。
感覚の共有ができるので、これを使って子どもたちの事実をつかみ学びを深めていきたい。
 

Bさん:小6の担当

自分は野球を専門にやってきたので、野球の動作分析に使っている。
ある運動をしたときの自分の感覚と、実際の動作との間にはズレがある場合がある。
それを写真や動画を見ることによって修正できるのではないか。結果とプロセスの理解など、タブレットはtoolとして使っていきたい。
GIGAスクール構想自体は、経済省から降りてきたもので、その経過も気になるところだ。
 

Cさん:山梨の小学校、今は日本語の指導を担当

山梨のこの地域ではソフトはクロームブックが採用され ているが、ロイロノートの方が使いやすいと思う。
タブレットを使うと、子どもたちに映像で見せることができるのが魅力的だ。
文章が書けない子どもには、映像が有効である。体育の指導でも、体育が得意ではない先生には助かる。
同様に書くことが苦手な子どもには役に立つ。

3人の報告を受けて、次のような発言がなされました。
〇教師が主体的に教育活動をできなくなることが心配
〇連絡帳がわりに使える
〇目的をもって使っている人はほとんどいない。休み時間は使えないなど制約が多い
〇うまく使いこなせる子とそうでない子の格差が大きい
〇エラーの訂正がすぐにできる点は良い。

実践報告<ネット型種目でICTの活用について>
Dさん(小学校)

ゲーム領域での有効活用を考えました。
ソフトバレーボールで、相手コートから来たボールを、キャッチしてパス~それをキャッチしてトス~それを打つ(アタック)という課題に挑みました。
トスを上げる位置はネットに近いセンターかレフトか、又はバック(ネットから遠い)とではどちらが有効かという学習課題に取り組みました。
それをタブレットを使った動画を見て学ぶというものでした。

議論の中では、授業のねらいはどのようなもので、ねらいを達成するために有効だったのか、バレーボールの教材研究の大切さ、小学生に教えるバレー技術の中でアタックの位置づけについてなどが話されました。
また、目で見ればわかるものはタブレットを使わなくても良いのではという意見も出ました。
3学期に引き続き研究会が行われるとのことでした。

参加者のEさんの感想

探求的な学習のツールとしての可能性の検討を
体育をめぐるタブレット活用について、現場の状況ベースで、リアルな問題・課題が色々な面から出されて、興味深かったです。
この問題はこれから一層掘り下げが必要にならざるを得ないことだとうと思います。
学習のねらいの内容を明確化すること、それに関わる子どもたちの学習も事実を客観化すること、その事実を元に学習の課題を導き出したり学習の課題の理解を深めたりすること、自分たちにとって意味のある課題解決の方法を探求すること、こうした学びのそれぞれの局面で活用可能なところと、活用が難しい部分を見極めていくことが必要になりそうです。
そこでは、実際に授業を作る教師と子どもたちの実態に基づいた検討が必要でしょうし、授業を支える学校の ICT への対応・姿勢が影響することでしょう。
ともかく探求的な学びを豊かにしていくツールとしてどうなのかという基本的なスタンスをしっかり持っておくことが大切になりそうです。
今日は議論する時間はありませんでしたが、「個別最適」ではなく、集団的組織的な学びを深めるために、さらに言えば、必ずしも正解があるわけではないような問題の集団的組織的な探究で、学びの面白さや意味を実感できるような学びを作るために、 ICT は役立つのかどうか?特に体育に関してはどうか?悩ましい問題はいっぱいです。
ともかく、大変面白い企画をしてくれた東京支部の皆さんありがとうございました。

〇教育政策的には問題だらけですが、今後も、引き続きこの問題を追っかける必要性は大です。
ツールは有効活用したいものですが、一方、学校・子どもの現実は本当にこれを必要としているでしょうか?
35人のクラスで子どもはバラバラ、先生は悩んで学校に姿を見せなくなってしまうという話を聞きます。
さらにみんなで考えていきたいテーマのようです。