2022-01-25

海外のデジタル教科書と教科書制度

 

海外のデジタル教科書と教科書制度について

~「海外教科書制度調査研究報告書」

(教科書研究センター)を読んで①~

中山 和人(北多摩東教育センター・東京民研共同研究者)

日本中の小中学生にタブレットが11台配られました。これは、2024年度にまず小学校から本格的に導入されるデジタル教科書を使うためのものです。

「デジタル教科書は世界のすう勢」と言われます。そこで海外のデジタル教科書を調べ始めたら、「おや?やはり・・・」と感じたことがあります。

デジタル教科書活用の前提である教科書を誰が選ぶのか(選定)、そして教科書検定制度とカリキュラム(日本では学習指導要領)の在り方が、日本が極めて特殊な環境にあることに気がつきました。

今の日本の教科書制度・検定や採択の在り方のままでは、デジタル教科書の特徴を生かした創造的な教育が阻害されて、世界から取り残されてしまうのではないかと思いました。

公益財団法人教科書研究センターでは20182019年にかけ、42か国1地域を対象に教科書制度を調査し、「海外教科書制度調査研究報告書」を刊行しました。48名の研究者による448ページの分厚い報告書です。

この報告書を読んで明らかになったことを中心に、文科省HPなども参考にしながら、報告します。

海外教科書制度調査研究報告書の構成は、次の様になっています。

①教育制度、②カリキュラム、③教科書制度、④デジタル教科書の現状や政策、➄興味深いテーマから見る教科書、この中から、今回は③教科書制度(特に検定と採択の部分)、④デジタル教科書の現状や政策、この2点について調査対象となったヨーロッパ14か国と日本を比較してまとめたものを報告します。

(注)明朝体は、海外教科書制度調査研究報告書の本文のママ、ゴシック体は筆者による加筆

①英国・イタリア

エストニア・オランダ・スウェーデン・スペイン・デンマーク

ドイツ・ノルウェー・ハンガリー

フィンランド・フランス・ポーランド・ロシア

日本

教科書への国・教育行政の関与の実態比較

(教科書検定制度と教科書の採択権限)

教育行政の関与の実態比較

調べて気が付いたことは、日本とヨーロッパ諸国の教科書制度の違いです。

日本とヨーロッパ諸国の比較

😲「過度に競争的な日本の教育体制」(国連子どもの権利委員会の勧告)のままでは、デジタル教科書のもつ可能性や創造的な活用も阻害される懸念がある

さらに、教育の基準とされるカリキュラムについては(今後詳細な報告を予定している)

〇ヨーロッパでは、教員の裁量(専門性の尊重)が保障されている。

〇日本では、文科省の学習指導要領で教育内容・方法にも厳しいしばりがある。

デジタル教科書の活用にあたっては、

拠り所は、

憲法26条「 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」

・教育を受ける権利の保障。普遍的で共通の教育=普通教育を受ける権利の保障

「子どもの最善の利益」(子どもの権利条約と日本政府への勧告)

そのためには、学校と教員の自主性・専門性が尊重されることが必要だと思う。これは世界の教育のすう勢になっている。合わせて、子どもの健康への影響について、医学的な検証を進めること。

ヨーロッパ諸国と比べてみると、日本では学習指導要領による教育内容と方法への管理統制が厳しい現実があります。デジタル教科書の持つ自由で創造的な活用の可能性を考えた時に、学習指導要領と教科書検定制度・採択制度の抜本的な見直しが必要になっていると思う。さらに、(今回はふれませんでしたが)ゆきとどいた教育条件の土台になる少人数学級の実現が課題だと思う。早期の中学校の35人学級、さらに30人、20人台学級をめざす課題です。学校現場からの子どもの実態と実践に基づく発信と保護者・市民の運動が実現の鍵だと思う。

◆「海外教科書制度調査研究報告書」(教科書研究センター:20182019年に42か国1地域を対象に調査)

◆文部科学省HPGIGAスクール構想の実現」「教科書制度の概要」「諸外国におけるデジタル教科書・教材の使用状況について」






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